※ここのところ頻繁にアップしていますが、近々離島へ飛び立つことになりそうなので
その際は記事の更新が数か月お休みになります。よろしくお願いします。
前回の自作は余詰で本当に申し訳ございませんでした。
開き直ってそのままにしていますが、いつか修正しようと思いますので
よろしくお願いします。
話は変わって今回は作品のレビュー。
最近の詰パラ本誌で特に感動した作品の中から一つ、選ばせていただきました。
岩田俊二作(詰将棋パラダイス2009.3)

今回こそ図面が大きくなっていることを祈るのですが。どうでしょうか。
→調整方法を把握したので、ちょうどいい大きさにしました。
さて、いかにも罠だらけの初形。飛車で王手をかけられそうですが、
対して52香・41角のバッテリーが控えています。
すなわち、初手64飛のような手では54香の移動合で逆王手。

一方攻方に目を向けてみると、28桂・29香のバッテリーが控えています。
これを活かすために、どこかで24と、同玉という手が入りそうです。
仮に初手から24と、同玉と進めるとすると
【24と、同玉、36桂、14玉、44桂、58香成】

何と先ほどの41角・52香のバッテリーが効いてきて逆王手です。
ここで閃いたでしょうか。74飛と王手をかけて飛車を4段目に持ってくれば、
さらに44桂を動かせるのではないか。そして見事に相手の角道をふさげるのではないか。
先ほど見たように相手のバッテリーに注意して、74飛としてみましょう。
仮想手順ですが、初手から
【74飛、54香、24と、同玉、36桂、14玉】

【44桂、58香成、52桂成まで11手詰】
なお2手目香打合でも同様に進むことができますが、最終手で駒が余りますので移動合。
さて、この手順にはいくつか穴があります。
・まず一点目に、24とに対して44玉と逃げる変化。

上図以下33銀生、53玉と追いますが、74飛が41角に睨まれていて手出しできません。

振り返って、74飛、54香の交換が入っていなければ、24とに44玉以下
【33銀生、53玉、73飛成】として詰むようです。

・2点目。気づきにくいですが、36桂に34玉とされると以外に手出しがしづらい。

先ほど同様74飛は動けません。
ここで67馬とできれば詰むのですが、67飛が邪魔をしています。
さかのぼって24と、同玉の瞬間に27飛、34玉、24飛、同玉と邪魔駒消去をしておけばいいようです。

上図であれば67馬の一手詰めです。
ただここでひとつ、手順前後の罠が待ち構えています。すなわち初手から
【24と、同玉、27飛、34玉、24飛、同玉、74飛】とすすめると、
【64歩合】

同飛にはもちろん、54香で逆王手です。かといって36桂と跳ねたのでは最後が王手になりません。
さかのぼって、67飛があれば、74飛、64歩合には同飛行以下容易に詰みます。

これで手順が一意に定まりました。
【24と捨て】→【74飛、54香の交換】→【67飛の消去】→【桂の3段跳】
最初から作意を並べると、以下のようになります。

【24と、同玉、74飛、54香、27飛、34玉、24飛、同玉、36桂、14玉、44桂、58香成、52桂成まで13手詰】

詰上がり図の成桂と成香の配置が印象的。
【感想】
実際に解いたかのような解説の書き方をしていますが、
この記事を書いた本人は何となく暗算で作意を見破って「簡単じゃん」と思っていたら
解答を見て奥の深さにびっくりしたタチです。当然、手順前後で誤解。
結果稿での誤解者は21名。きっと私と同じような感想を持っておられるのでしょう。
改めてこの作品を眺めてみると、13手の中によくこんなに盛り込んだなという印象。
2手目の香移動合は打合でも同じように見えますが、実は最終手の桂成と絡んでいる。
67飛車の消去は36桂跳に34玉と逃げられた時のための伏線。
手順の密度というよりも、こんなにたくさんの仕掛けを、同じ舞台で実現できている点、
さらにそれらが一本の論理で見事に結びついている点に感動を覚えたのです。
今井光作品でもそうですが、私はこういった組み合わせの妙がすきなのかもしれません。
岩田さんは他にもおもしろい構想作をいくつか発表されていて、
個人的にとても気になっている作家です。
13手詰にしてやたらと長い記事を書いてしまいました。
また気に入った作品をいくつか書いていくつもりです。
それでは。