自作解説補足2:7手詰(詰将棋パラダイス2013年4月)
※どうやら冒頭に目次を表示していると、おもちゃ箱に拾われないようなので、削除しました。
プロフィール欄に移しておきます。

私事ですが、現在のパラの入選回数は30回くらい。
将棋世界など他のコーナーの発表作も含めると、40作くらいが既発表フォルダに入ってます。
実は一度もここで超短編の解説をしたことがなかったかもしれない…。
ということで、創作過程の説明をしてみようと思います。
今回取り上げる題材は、昨年半期賞をいただいた自作。
実は、いくつかの作品を組み合わせ、変形させてできているものです。

発想が浮かんだのは高校生の時。下の2作品に感動しました。

小林敏樹氏作(7手詰)(詰将棋パラダイス1990年12月/2006年3月将棋世界付録)
7手_kobayashi

45角、同桂、49馬、57桂生、37歩、49桂成、36歩まで7手詰。

ちょうど詰将棋パラダイスの購読を始めたばかりの時だったと思います。
小林さんの作品集が見れる!付録目当てで将棋世界を購入しました。
こんなサーカスみたいな手順が成立するなんて!

形は重いですが、相当作図に苦労されたのでしょう。
大駒4枚持っている状態で移動中合を出すのは大変。これがベストと思われます。
さすが小林さんです。

続いてこの作品。

若島正氏作(15手詰)(将棋世界1982年5月/「盤上のファンタジア」10番)
11手_wakashima

11金、同玉、23金、13馬、33馬、21玉、22馬、同馬、33桂、同馬、12金まで11手詰。

このころ、盤上のファンタジアを穴のあくほど読み返していました。
永遠の夏休みのようなあの時間。
本作から得た発想は、背後に香や龍がいる場合でも中合っぽく見えるということ。
そして、意外と気づかれにくいのではということ。

小林氏の作品では、移動中合は45を開けるのが目的。
しかしこの二つを合わせると、当然ながら小林氏作の構図で、
攻方67飛の背後に77飛を置きたくなるわけです。
すると玉が逃げていくような変化を置く必要がなくなりますし。
…と考えていると、どうやらこの構図で馬の開き王手を止めるには
いくつかの合駒があることがわかりました。

3手案

この、39馬の王手に対しては、47桂合、37銀合、37金合、37角合、37香合が
27香までの詰を防止するための受けになっています。

このうち、47桂合は無駄合なのでとりあえずおいといて
(実は玉方55桂を配置すると面白いですが、小林さん作と比較して
明らかに見劣りするので見送った)、
角金銀の合駒は取ったら詰みそうな構図なのですが、香車だけはうまくいかず。
いろいろ考えたのですが、これを偽作意として馬を逆方向に飛ばすことで
一旦はまとめました。
67飛成で飛車が縦に利いてくるので、馬の移動が限定になるところも
本作を完成図としたところの原因でした。

3手案_不詰

ところがパソコンでチェックしてみると、この図が詰まないのです。
よくよく考えてみると、何と75馬には27歩合で逃れている…
これも偽作意にして、第三の詰め方を作ったらもっと凶悪な3手詰になっていたことでしょう。

結局これ以上の構図は見つからず、やむなく25とを配置することで発表。

自作(詰将棋パラダイス2007年5月小学校)
3手_para2007_5

75馬、67飛成、53馬まで3手詰。
※初手39馬は37香合(限定)で逃れ。

この図でも140名中28名が誤解。相当の人に不快な思いをさせてしまったと思われます。

さて、本作は創棋会作品集「撫子」にも掲載したお気に入りの作品なのですが、
よく見るとやっぱり無駄な配置が多い(例えば55歩とか)。

あるとき上の3手詰を見返していたのですが、ふと
28歩と29香を入れ替えてみたらどうだろう…とやってみた。
すると、ふとひらめいたのです。26香と走らせると、37の駒はピンされたまま!
香を玉にとってもらって収束するようにすればいい。
これを作意に昇華させようと頑張った結果、下図のような7手詰めを得ました。

7手_案1
58角、56金合、45香、同玉、55馬、同金、36角まで7手詰。

(この図は検討していないので余詰んでいる可能性はありますが、原理的には成立しています)
しかし金合が出てくるのでちょっと重い。余詰消しも結構おかなきゃいけないだろう。
もっと欲張って考えると、初手から65歩があって、角の動きが自由ではない。

ふと、金合を移動合にしたらどうだろう…と思い、
やがていじっているうちにできたのが次。かなり完成図に近づきました。
7手_案1_5

このときについてきたボーナスとして、初手55角の紛れがあげられます。
これが47歩合で逃れていたのは、作者にとっても幸運でした。

この図を棋友に見せたところずいぶんと考え込まれてしまう。
これはいけるかな?という感触を得たのがこのときでした。

しかしこの図も不満があります。44とがどう見ても45の銀を支えるだけの目的で、
上に逃がせと示唆しているような配置だからです。

1週間くらいあれこれ考えて、ようやく36銀配置を発見。満足のいく図になりました。
満を持して投稿。

7手_案2

しかししばらくして、編集部から返送のお手紙が。
「5手目から86飛以下余詰」ガーン。

7手_案2余詰

運よく97飛を龍にするだけで何とかなりましたが、もしそのまま発表されていたら
大切な素材が余詰で潰れていたかもしれません。
検討係の方に感謝。

自作(2013年4月詰将棋パラダイス小学校)
13-04小学校(27)
59角、57と、46香、同玉、56馬、同と、37角まで7手詰。

作っていく過程で偽作意ものにするつもりは全くなかったのですが、それでも誤解者が11名。
やはり、変化で47香をずっと読ませながら46香と逃がすのはやりにくかったようです。

かなり適当な記事ですが、今日はこのくらいで。
[2014/05/14 08:55] | 発表作補足 | Trackbacks(0) | Comments(2)
自作解説補足1:詰将棋パラダイス2012年7月号
2回目のコンテンツ更新です。
既発表作は基本的に掲載しなくてもいいかな、というスタンスなのですが、たまに必要があれば(というか書く時間があれば)補足部分や創作過程を掲載しようと思います。

詰将棋パラダイス2012年7月号 短期大学


作意手順
44馬、36玉、28桂、同と、48桂、同金、39香、同金、26馬、45玉、49香、同金、44馬、36玉、38香、同金、26馬、45玉、46歩、同桂、44馬、36玉、27龍、同玉、26馬まで25手詰

■1:創作過程の補足
補足の一項目目は、本作は金子義隆さんと共作の予定だったということです。後述の創作過程で紹介する17手詰を高校生の時から素材として持っていました。しかし、原図では49香に対する46香合が割り切れず、やむなく売り切れで処理。3年間寝かせたものの逆算がうまくできず、ついにあきらめて高校に投稿していた作品でした。

「この前見せていただいた作品、ちょっといじってみたら桂香捨ての逆算ができました」
京都でのミニ会合(上田吉一さんに金子さん、宮原さん、久保さんという何とも刺激になるメンバーがたまに集まって開催)で金子さんに図面をお見せした、数日後のメールでした。
そこに入っている図面(発表図です)の変化・紛れは本当にきれい!盤面の駒が無駄なく動いていて、金子さんの創作技術はすごいと改めて感じたものです。

あわてて高校への投稿を取り消したのち(高校担当の宮原さん、ごめんなさい)共作にさせて下さいとメールを返したのですが、「私はちょっと手を加えただけですから」と。本当に謙虚な方です。
そんなわけで本作、表面的な手順の3分の2くらいは私なのですが、変化紛れに至っては半分かそれ以上、金子さんの改良によって成り立っているものです。

この場を借りて、お礼を申し上げます。

■2:変化紛れの補足
結果稿では変化紛れがほとんど省略されてしまったので、ここでどのような論理で手順が成り立っているかを補足させていただきます。手順通りの説明になっていませんが、このほうが作意の成り立ちが頭に入りやすいと思うので、上から順に追ってお読みいただければと思います。

●1. まず49香に対する12手目、香の遠打に対しての応手。

ここでの作意は同金ですが、48歩合、47歩合、46歩合、46香合の変化を順に見ていきます。

1-1.48歩合
以下44馬、36玉、37歩と進んで



→25玉なら34馬以下ごり押しで詰み。
→27玉なら26馬、38玉、48龍、29玉、28龍まで。

最遠打の意味づけがここに表れています。

1-2.47歩合
これは44馬、36玉、47龍以下容易に詰みます。

1-3.46歩合
これも1-1とほぼ同様に詰みます。すなわち44馬、36玉、37香と進んで
→25玉なら34馬以下。
→27玉なら26馬、38玉、48龍、29玉、28龍まで。

1-4.46香合
これが少し厄介。



1-3での48龍を防ぎたいという意味。これに対しては1-3と同様に攻めても詰みませんので、代わりの手段を考えます。
44馬、36玉、38香、同金(※同とは27龍、同玉、26馬まで)、54馬、25玉、36馬、同玉、46龍、25玉、26龍、14玉、15香まで。



途中38香と捨てておくのがポイントで、46龍に対して27玉と逃げられた時の玉の逃げ道をふさいでいます。また、香が一枚増えたことにより15香までの詰手順が可能となります。
※46歩合の時には香車の数が足りないため、この変化が成り立たないことに注意
以上見たように、49香に対しては同金しかないことが分かりました。

●2. 11手目48香の紛れ



これは46歩合と受けられて逃れます。以下44馬、36玉で
・38香なら同金、54馬、25玉となって1-4の変化と類似しますが、46の駒が歩なので香車が一枚足りなくなります(1-4の※を参照)。すなわち、25玉以下36馬、同玉、46龍、25玉、26龍、14玉で逃れ。二歩により15歩は打てません。

●3. 7手目38香の紛れ


1-2を読んで、香車の数が足りないのであれば最初から39香ではなく38香と打てばよいのでは?と考えるかもしれません。しかしこれも詰まないのです。
上図からの応手は同金。以下、26馬、45玉で



3-1.49香は48歩合で逃れ。

3-2.48香は同金で逃れ。

3-3.47香は46歩合で、44馬、26玉以下
 →54馬は45飛合、46龍(ここ同馬は同銀で詰まない)、25玉、26龍、14玉で逃れ(飛車が効いていて15香が打てない)


つまり最初から38香とすると、金が48にも効いているため香を47に打たざるを得ず、54馬に対して45飛合で逃れてしまうというわけです。無解者が多かったのは、このあたりの綾が読みづらかったためかもしれません。ここを抜ければ後は収束までそれほど苦労する部分はないのですが…。

なお最初以外は省略させていただきましたが、25玉と逃げる変化はすべて34馬、同玉、54龍以下強引に下段に追って詰んでいます。


■3.その他創作過程
そもそも収束17手詰に至るまでの創作時間はごく短く、起点は13手詰でした。
やりたかったのは46桂を跳ねさせる前に38を埋めておかないと、桂に2段跳ばれて46が空いてしまうというところ。馬の往復運動が多いのでリズム感が出ていて、個人的には好みの素材でした。ここから48龍でしか詰まない変化を強引に付け足し、26馬以下の17手詰が出来上がりました。


しかしながら上で述べたようにこの図では46香合がどうしても詰まず、やむなく香を盤面に2枚配置することになりました。ムードに合った逆算をしようとすると必然、逆算するなら桂捨てか香捨てを入れたい。駒取りも避けたい。しかし香捨てを入れると46香合が発生して不詰になってしまう…。このジレンマで悩まされ、3年が経過したというわけです。

そんなときにふと送られて来た、金子さんからのメール。46香合の時は26龍~15香という手順で詰むようにしたのが新工夫で、そのあとの逆算にはほとんど苦労しなかったとの言葉が添えてありました。こんな図面で成り立つのか、と心底感激したものです(結果としてこれが完成図になりました)。



この作品、思った以上の高評価をいただいて本当にびっくりしていたのですが、上で書いたように頭8手は金子さんが提案してくださったものです。なので、これは私への評価ではなく、金子さんの作図技術も込みでの評価なのだと感じております。
ただ、個人的には無解者が10名を超えてしまった点が非常に残念でした。変化紛れが多かったということなのでしょうが、せっかく考えてくださるのだからなるべく解答者に分かりやすい作品を作っていきたい、というのが本音です。
最後になりますが、本作を解いて下さった皆様、見てくださった皆様、そして金子さん、本当にありがとうございました。

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追記
現在、今井光作品の解析記事を書いています。もう少しアップロードできるかと思うのですが、
今しばらくお待ちください(お客さんが少ないのにこんなこと書いても仕方ないのですが)。

それでは。

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追記(2014.5.15)

図面大きくしました。ようやく…。
[2013/03/26 07:22] | 発表作補足 | Trackbacks(0) | Comments(4)
詰将棋懐石メモ~h160seの倉庫~


※あまりにも陳腐な名称なので漢字を少しかえてみました。懐石料理のようにじっくりと詰将棋を味わう意味も込めて。

プロフィール

shogisolving160

Author:shogisolving160
詰将棋の自作置き場、及び人の作品の覚書。人に見せるというよりも、自分の頭を整理する意味が強いので、その辺お許しください。あ、リンクフリーです。

※図面を勝手に掲載された!という作者の方へ
勝手に図面を掲載してしまい、不快な思いをされた場合はお詫び申し上げます。連絡いただいた場合は速やかに記事を削除させていただきますので、どうぞご連絡ください。

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