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自作倉庫8:13手詰
うっかり今月は3つも記事を投稿してしまうことに。
忙しさとやる気によって大きく左右されるので、定期更新が難しい状況です。

※前回の馬賊戦記の解説ですが、般若一族の本がずっと日本に置きっぱなしなので、
そのうち加筆しようと考えています。少々お待ちを。

さて、次のような詰将棋を作ったのですが、高校にはちょっと投稿できず、ヤン詰の解付きに出すか
どうしようかと悩んだ挙句、ここにあげておくことにしました。

150814_13手詰

既成手順なので、類似作が山ほどあると思います。
基本手筋なのですが、初手がこの形で成立しているのがうれしいな、と。

そのうち、コメント欄に答えをあげておきます。

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[2015/08/29 07:43] | 詰将棋鑑賞 | トラックバック(0) | コメント(1)
詰将棋懐石11:黒龍江氏作「馬賊戦記」 (詰将棋パラダイス1996年1月号_修正図)
般若一族作品の解析第3弾。
今回は馬ノコが狂うほど出てくる「馬賊戦記」です。

般若一族のページで、首孟夫さんが書いた解説があるのですが、
何度読んでも、私の理解が追いつかず。
自分なりに解釈して、少し詳しめに書いてみました。

手順に沿って解説すると変化と紛れがわからなくなるので、
途中脱線の多い解説になっています。(====でところどころ区切ってあります)
わかりにくいと思いますので、作意手順は最後にまとめて載せています。

(初形)


1.2枚の馬を引き寄せる

初形から25成香とすると収束手順を試すことができるのですが、
【25成香、37玉、38歩】…図1


47玉なら58銀以下詰みなのですが、あいにく46玉として不詰。
ここ、もし63角が馬なら64馬以下。収束手順はこの61・63馬型でのみ
成立します。

63角を馬にかえる必要があるようです。
そのためには、いったん成ってもう一度遠ざければよい。そこで、初手から
【36成香、27玉、46成香、26玉、36角成、17玉】…図2


しかし、この36馬・46成香型では36馬を自由に動かすことはできません。
上図から35馬としても、26桂合でまったく詰まないからです。
どうやら、もう一枚の馬も近づけて、少し組み替える必要があるようです。

【62馬、16玉、52馬、17玉、53馬、16玉、43馬、17玉、44馬、16玉、
34馬、17玉、35馬引、16玉】…図3


36馬型での利点は、もう一枚の馬を簡単に鋸引きさせることができること。
26金合の変化も、(ここでは省略しますが)割り切れています。
(詳細は般若一族のページをご覧ください)

2. 45馬型を得る

次に、45馬型で新たな馬ノコを得ることができる、ということに気付くのが
かなり難しいのではないかと感じました。

【25馬上、27玉、45馬、17玉、35馬右、16玉、34馬左、27玉、45馬寄、26玉】…図4


36馬・17玉型では18歩が打歩詰になりますが、馬を一つ遠ざけると18歩以下詰みます。
そこで、玉方はこれを避けて、17玉ではなく26玉と逃げます。

【44馬寄、25玉】…図5


上と同様に、35馬・16玉型では17歩が打歩詰になりますが、これも馬を一つ遠ざけると
17歩が打てるようになります。そこで、玉方もこれを避けて16玉ではなく25玉と逃げます
(16玉と逃げると17歩、25玉、36馬、24玉、35成香以下)。
このあたりの綾が非常にややこしい。

この局面で36馬とするのは16玉で打歩詰なので、
【35成香】と追うのが正しい手順になります。…図6


これに対して【14玉】と逃げるのは、
【36馬、13玉、22馬】まで簡単に詰みます。…図7


そこで、図6に戻って、35成香には16玉と逃げます。
【16玉、43馬、26玉、36成香、27玉、46成香、26玉、53馬、16玉】…図8


====以下補足====

ここで16玉にかえて25玉と逃げるのは、
【35成香、16玉、52馬、26玉、36成香、27玉、46成香】
で、2手短縮します(恐ろしい罠…)。
手順中の35成香に対して14玉と逃げるのは
【36馬、13玉、14歩、23玉、22と、同玉、31馬】…図9
以下詰。41と配置が利いています。


また、図8の16玉の局面から【17歩】と打つと簡単に詰みそうですが、
【25玉、35成香、14玉、36馬、13玉】で14歩と追えずに不詰。…図10


つまり、53馬型では、16玉型に対して17歩から35成香と追っても届きません。

35成香に対してはこのように、14玉と逃げられる変化が常に付きまといますが、
図7と図9でみたように、この変化が詰むのは
馬が44か53にいるときのみで、ほかの場所では詰みません。

例えば図8から
【34馬、27玉、63馬、26玉、35馬、16玉、52馬、27玉、45馬、26玉、62馬】とすると【25玉】…図11



この局面から【35成香】と追っても【14玉、36馬、13玉、14歩、23玉】で
捕まらなくなります。この逃れ順によって、45馬型では、
もう一方の馬を62~61へ運ぶことができないのです
(多分、首さんの解説では触れられていなかったと思います)。

====補足終了====

そこで、16玉と逃げた図8から、新たな攻め方を考えないといけません。

3. 47成香型を得る

再掲:図8


【34馬、27玉、63馬、26玉】…図12


====以下補足====

図12から【35馬、16玉、52馬、27玉、45馬、26玉、44馬】…図13
がきわどそうです。


以下
【37玉、47成香、27玉、54馬、26玉、36成香、27玉、46成香、26玉、53馬行、37玉、
47成香、27玉、63馬寄、26玉】
と進むと(実はこれは作意でも最後に出てくる馬ノコです)…図14


さらに、
【36成香、27玉、35成香、26玉、25成香、37玉、38歩、47玉、58銀、同玉】と進みますが、
作意と違って馬が52にいるために、【85馬、67銀成】で、馬を36に引くことができずに逃れます
(作意では馬が52ではなく61なので、85馬にかえて94馬とすることが可能)。

また、14図から
【62馬行】と進めるのは、【37玉、47成香、同玉】…図15 とされて


以下、【58銀、同玉】で、62馬が活用できないために詰みません。
つまり、ここまでに出てきた馬ノコを合わせるだけでは、2枚の馬を適切な場所に配置することができないのです。

ここで、首さんの解説を引用してみましょう。
47成香に対して、玉がこれを取れるのは、44や53に馬がいるときはだめで、73歩の影に入った62馬の時だけ。
逆に言えば、62馬の瞬間に47成香を同玉ととられ、詰まない


====補足終了====

再掲:図12


【35馬、16玉、52馬、27玉、45馬、26玉、44馬、37玉、47成香】…図16


====以下補足====

これを【同玉】ととるのは、以下
【58銀、同玉、48金、67玉、85馬、76歩合、59桂、68玉、77銀、同歩成、58金】…図17
まで。44馬がうまく77まで利いています。


この手順は44馬が53馬でも成立する手順(手順中、77銀に代えて86馬)ですが、
62馬の時は成立しません(上記の図13~図15の紛れを参照)。

====補足終了====

回り道をしてしまいましたが、図16の作意に戻ります。
再掲:図16


ここから作意は【27玉】と逃げます。ようやく47成香型が実現しました。
【45馬(54馬でも可)、26玉、36馬、17玉】…図18


図2から4手進めた途中図(52馬、17玉の局面)と比較すると、
なんと変わった場所は46成香→47成香のみ!これだけのために延々50手かけたのです。

さて、ここからもまだ長い道のりです。

4. 34馬型を作り、新たな45-72ラインの馬ノコを得る

47成香型を得たら再び、馬を近づけて34馬型を作る必要があります。
これは、次に72まで新たな馬ノコのラインを確保するためです。
はじめの手順と同様に、いったん遠ざけた52馬を再び35までひきつけ、
25に利きを作る必要があります。

再掲:図18


【53馬、16玉、43馬、17玉、44馬、16玉、34馬、17玉、35馬引、16玉】…図19


【25馬上、27玉、45馬、17玉、35馬右、16玉、34馬左、27玉、45馬寄、26玉】…図20


図18~20が、図2~4と対応していることをご確認ください。
図20では、はじめの46成香型ではできなかった新たな馬ノコが可能になっています。

【44馬上、27玉】…図21


46成香型のときは、ここで37玉と逃げられて詰みませんでしたが、47成香型になったことで、37が封鎖されているのです。
この(34馬・47成香)型では、45-72ラインをもう片方の馬が自由に行き来することができます。

【54馬、26玉、53馬、27玉、63馬、26玉、62馬、27玉、72馬、26玉】…図22


無事、72まで馬を運ぶことができましたので、ここからラインを繰り替えて61馬型にします。
47成香型は46成香型に変換しておかないと、35馬型を作ることはできません。

【36成香、27玉、46成香、26玉、35馬、16玉】…図23


【61馬、27玉、45馬、26玉】…図24


これで、61に馬を据えることができたので、47成香を同玉ととられる心配がなくなりました。
また、61馬型なので25玉と逃げられる厄介な変化もありません。
馬を63に遠ざけるための、最後の鋸引きが出てきます。

5. 63馬型に戻す

成香をやりくりしながら、2つ目の馬を遠ざけていきます。

再掲:図24


【44馬、37玉、47成香、27玉、54馬、26玉、36成香、27玉、46成香、26玉、
53馬、37玉、47成香、27玉、63馬、26玉、36成香、27玉、35成香、26玉】…図25



この局面と初形を比較すると、見事に63角が63馬に裏返っただけになっています。
ここまでかかるのに122手!

====以下補足====

※ここで、「馬賊戦記」唯一のキズ(?)が存在するようです。
上図【26玉】に代えて【54歩合】とする手があるのです。…図26


これは【同馬、26玉、36成香、27玉、46成香、26玉、53馬、37玉、47成香、27玉、63馬、
26玉、36成香、27玉、35成香】…図27
と進み、元の局面に還元します。


16手かけて元の局面に戻るので、無駄合とみなしてもよいのですが、
現代ルールではなるべく避けたいと言われている類の変化です。

さらに、2歩持ったこの局面では、ちょっと長いですが
【46成香、26玉、36馬、17玉、62馬、16玉、52馬、17玉、53馬、16玉、43馬、17玉、
44馬、16玉、34馬、17玉、35馬引、16玉、25馬上、27玉、45馬、17玉、35馬右、16玉、
34馬左、27玉、45馬寄、26玉、44馬行、37玉、38歩、27玉、45馬右、16玉、17歩、25玉、
36馬、24玉、35成香、23玉、22馬】
までの別詰も発生しています(作意手順よりもずっと長い)。

5筋に歩を配置することができればいいのですが、どうも盤面はいっぱいみたいです。

====補足終了====

本筋に戻ります。63馬に26玉と逃げた局面から。
再掲:図25


ここまでくれば、最初に確認した収束手順をたどってみるだけ。
38歩に46玉の変化は、63馬のおかげで詰むようになっています。
図25から
【25成香、37玉、38歩、47玉、58銀、同玉、94馬、67金】…図28


なぜこの形に戻さなければいけないかは、首さんの解説で言い尽くされています。以下引用。

玉から遠い馬を使って最初の合駒を問うのだが、そのときに36に引ける馬を残して
おかなければ、(94馬に対して)67銀成が詰まない


すなわち、図28で67金合にかえて【67銀成】は、【48金、68玉、58金、同玉、36馬】以下。…図29


変化で36馬と引く余地を残しつつ、左側から王手をかけることができるのは、
61馬・63馬型のみ、ということですね。作意では63の馬は36ではなく85に引き、以下は収束手順です。

5. 手順のまとめ

作意をまとめて並べてみます。
(動く将棋盤で鑑賞したいという方は般若一族のページから鑑賞できます)。

初形

【36成香、27玉、46成香、26玉、36角成、17玉】


【62馬、16玉、52馬、17玉、53馬、16玉、43馬、17玉、44馬、16玉、34馬、17玉、35馬引、16玉】


【25馬上、27玉、45馬、17玉、35馬右、16玉、34馬左、27玉、45馬寄、26玉、44馬寄、25玉、
35成香、16玉、43馬、26玉、36成香、27玉、46成香、26玉、53馬、16玉、34馬、27玉、63馬、26玉】


【35馬、16玉、52馬、27玉、45馬、26玉、44馬、37玉、47成香、27玉、45馬、26玉、36馬、17玉】


【53馬、16玉、43馬、17玉、44馬、16玉、34馬、17玉、35馬引、16玉】


【25馬上、27玉、45馬、17玉、35馬右、16玉、34馬左、27玉、45馬寄、26玉】


【44馬上、27玉、54馬、26玉、53馬、27玉、63馬、26玉、62馬、27玉、72馬、26玉、
36成香、27玉、46成香、26玉、35馬、16玉】


【61馬、27玉、45馬、26玉、44馬、37玉、47成香、27玉、54馬、26玉、36成香、27玉、
46成香、26玉、53馬、37玉、47成香、27玉、63馬、26玉、36成香、27玉、35成香、26玉】


【25成香、37玉、38歩、47玉、58銀、同玉、94馬、67金】


【48金、68玉、67馬、同玉、85馬、76角、77金、68玉、58金、同角成、78金、同玉、
79銀、87玉、88歩、同金、同銀、同玉、89金、87玉、79桂】まで151手詰。



収束手順に入るためには63角ではなく馬である必要があり、
また、適切な場所に角を引くために61馬・63馬型を作らないといけない。

63馬型を得るためには46成香~47成香~36成香の往復運動を含む
馬ノコを行わなければいけないが、この、(図24から図25に至るまでの)
鋸引きは、36馬型・17玉型からでは成立せず、45馬・26玉型を作る必要がある。
また、47成香を同玉ととられる変化で、馬を引く必要があるため、
61馬型を作っておくことが必要。

しかし、直接、43-53-52-62-61のラインで馬を運んでも収束に入ることができない。
なぜなら、このラインを確保して、かつもう一方の馬を動かすためには
36馬型ではなく45馬型でなければいけないが、
45馬型では常に25玉~14玉と逃げられる順があり、
この変化が詰むのは馬が44か53にいるときのみだからである。

そこで、61馬型をつくるために、47成香・34馬型から36-72ラインの馬ノコで遠ざかり、
繰り替えて72-61馬と移動させる。
47成香型にする理由は、馬ノコの途中で37玉と逃げられないようにするため。

47成香型を得るために、47成香に同玉の変化に備える。
馬を85に引けるようにする必要があるので、一度馬を52へもっていく。

52へ馬を持っていくためには45馬型で馬ノコを行う必要がある。
片方の馬を45-34に配置したまま、もう片方の馬を43-53-63-52と離していく。

43-61ラインの馬ノコで遠ざかるように見えて、実は62馬時点での変化が詰まないので、
いったんラインを繰り替えて72から攻めないといけないという素晴らしい仕掛け。
それを看破しないと見えてこない、47成香型への変換と、それに伴う変化。
繰り替えるために毎回、馬を近づけたり遠ざけたりしないといけない
もどかしさ。
出てくる馬ノコは5種類ですが、16玉型と25玉型、46成香型と47成香型の差異などを
かけ合わせると、とんでもないパターンの馬ノコを読まされることになります。
究極の作品ではないでしょうか。

6. 筆者の感想

今井光作品よりも理解が難しい作品でした。

修正図は収束が精いっぱいだった、と首さんのページには書いてありますが、
収束があるだけでもすごいこと(余談ですが、不動の11飛と99飛に茶目っ気を感じるのは
私だけでしょうか)。修正図は出題時余詰だったそうで、完全作として世の中に
出回っていたらどのような評価を受けたのだろう、と思うと、なんとも惜しまれます。
今回解析したのは修正図ですが、原図では作意や変化の割り切り方がだいぶ違うみたいで、いつか鑑賞してみたいです。

「馬賊戦記」はどうやら、有名な小説の題名からとったようです。
私は薄学で読んだことがないのですが、あらすじを調べてみると
・戦争後の混沌とした世の中
・中国大陸で「馬賊」として活躍した日本人の一代記
・抗日闘争と日本人としてのアイデンティティの葛藤
などがヒットします。
2枚の馬が踊る様子をこの小説の題名と掛け合わせたのか、あるいは、
孤独な日本人として果敢に生きる主人公を、馬との闘争を重ねる玉と重ね合わせたのか。

般若一族の作品は見ていると勉強になります。
棋力がさほどない私でも、論理を紐解けばわかる…という点は、
コンピューターでも解けない難解作(裸玉とか)とは全く異なる作品群。

園狸の虎や馬賊戦記、今井光作品は、コンピューターで解かせると
いともあっさりと答えを出してくる。「こんなの簡単ですよ」と言わんばかり。
それをパズルとして、悩んで味わうことのできる人間のほうが、
コンピューターよりも幸せな頭を持っているのかもしれません。

園狸の虎は、拡張した無駄合の概念に全面的に頼っている部分があり、どうも解説しづらい。
逆に馬賊戦記は、非限定やキズが限界まで少なくなっている。
私が見つけたのは、図15から図18に至るまでの54馬/45馬のキズと、図25の54歩合のみ。
しかし、これだけの複雑な馬ノコでなぜ迂回手順がないのか、私には不思議でなりません
(少なくとも私は見つけていないのですが、どなたか見つけたら教えてください)。

コメンテーターとして、馬ノコに詳しい馬屋原さんあたりに
登場していただけるととてもうれしいのですが。

ではでは。国外からの論考でした。

7. 参考文献
じっくり見させていただきました。御礼申し上げます。
・「般若一族全作品」
・「般若一族の叛乱」ページ(URL:http://hyudo.shiteyattari.com/problem/bazoku/bazoku.html)
[2015/08/11 13:32] | 詰将棋鑑賞 | トラックバック(0) | コメント(5)
詰将棋解析10: フォークランド島(近代将棋1982年10月号_修正図)
無理やり時間を作って、とても久しぶりの更新です。
(この詰の原稿を書いてしばらく満足してしまっていたのがいけなかったのかもしれません、が...)

※前回書いた「香の使い方」の記事、誤字脱字があまりにもひどい。すみません。
そのうちに直しますので、しばらくお待ちください。

今回は、今井光作品に続いて、般若一族の作品を解説しようと思います。

フォークランド島(修正図)


般若一族の作品集が出て、とてもうれしいです(残念ながらインドネシアには持って来ていないので読めないのですが)。
難解な論理で成り立つ作品、いくら解説を読んでも、自分の頭で理解しえない作品が世の中には多くあります。
何度も並べて、論理の組み立てを紙に書いて、ようやく理解できる。同時に、違う視点での解説を書いてみることも大切だと思うのです。

そんなわけで、自分なりに理解できたことをここに示してみようと思います。
説明はかなり簡潔ですので、初見の方は般若一族の叛乱ページの解説(http://hyudo.shiteyattari.com/problem/folkland_island/folkland_island.html)や、
角さん・近藤さんらの編集された般若一族の作品集を一通り
見られてからこちらを読まれることをお勧めします(とはいえ、被っている箇所もかなりありますが…)。
他の説明に載っていない部分も勿論ありますし、逆に本稿で解説できない部分も多々あります。
自分の好きな作品を自分が理解することが第一目的という勝手なサイトですので、お許しください。

■83と型での攻防


初形から、【56飛、65玉、66飛、54玉、56飛、55銀合、同飛、同玉、56銀、54玉、65銀、53玉】


序が結構難しそうですがとりあえず割愛。ここから【56飛】とした局面で
・42玉と逃げると
【54桂、53玉、62桂成、42玉、54桂、53玉、63成桂】以下詰み。
この変化に備えて、桂馬を2枚持っていなければなりません。

・54角合は
【同銀、64玉、66飛、54玉(74玉は63飛成以下)、65角、64玉、43角成】以下。

よってここは54香と中合が出ます。この54香合を同銀と取ると【64玉、66飛、74玉】で逃れます
(ちなみに、66飛に54玉、56香、55銀合、同香、同玉とすると局面が還元するので
ここで逃れ手順を作る必要はないと思われるのですが)。

【54香、同飛、42玉、53飛成、同玉】


【55香、54角合】

角合に変えて54飛合は
【同銀、64玉、56桂、55玉(74玉は63銀生、85玉、86飛、95玉、96歩)、67桂、56玉、66飛、56玉、47金】まで(下線部修正。相馬さん、的確なご指摘ありがとうございます)。
この変化のために55香は限定(56だと飛合で詰まない)。


飛⇒香⇒角の持ち駒変換は見やすいところだと思いますが、果たしてなぜこれを行うのか…。
角を得た後に【71角】とこちらから王手をすれば、83と型から72と型に変化することができます。
また、42玉型で【15角】と王手すると【24飛合、同角、同香】として
22香を24香へ吊りあげることができます。この意味は序盤では分かりづらいですが、後ほど説明を行います。

また、次に説明するように、一旦72と型にすると玉方は54角合を出してこなくなります。
[22香→24香] の変換を行うには、71角よりも先に【15角、24飛合、同角、同香】の仕事を行う必要がありそうです。

これまでの手順をまとめると、

・序から

【56飛、65玉、66飛、54玉、56飛、55銀合、同飛、同玉、56銀、54玉、65銀、53玉】


【56飛、54香、同飛、42玉、53飛成、同玉】


【55香、54角、同香、42玉、15角、24飛合、同角、同香、53香成、同玉】


変換をもう一度繰り返します。
【56飛、54香、同飛、42玉、53飛成、同玉】


【55香、54角、同香、42玉、53香成、同玉】


72とへの変換を行います。ここでは香合いをした方が手数が長い。
【71角、62香合、同角成、同玉、72と、53玉】


■72と型での攻防
角を渡しては62に打たれて簡単に詰んでしまうので、55香には飛合、56飛には香合で対抗します。
【55香、54飛合、同香、42玉、53香成、同玉】


ここで千日手になってしまいそうですが、56飛、54香合に対して同銀、64玉、66飛という攻め方が可能になっています(83と型のときはここで74玉と逃げられて不詰)。
すなわち、
【56飛、54香、同銀、64玉、66飛、54玉】


※ここで74玉と逃げるのは63飛成以下、香を手持ちにしているので詰みます。

【56香、55銀合、同香、同玉】
72と型にするとはじめて56香、55銀合という手順を繰り返すことができるようになると分かります。


46金が入れば、あとは持ち駒変換を行って、こじ開けた45に桂馬を捨てて詰み。
83と型で、56香に対する54飛合の変化でこの47金が必要なので、角で局面を変化させた後に37金を捨てることが必要だったのです。
【46金、同歩、56銀、54玉、65銀、53玉】


※72と型で、55香に54飛合とされたときにこの攻め方が可能に見えますが、香一枚の差で詰まなくなっています。
すなわち、46金を捨てる前の局面で、55香に54飛合、同銀、64玉、65飛、74玉、63飛成、85玉は不詰。


あとは2つ上の図から収束です。
【56飛、54香、同飛、42玉、53飛成、同玉、55香、54飛合、同香、42玉、53香成、同玉、45桂、同香、54飛、42玉、43銀成、同玉、35桂、33玉、34香、42玉、44飛、53玉、43飛成】
まで93手詰。

手順中の34香に対して24玉と逃げられないように、24をあらかじめふさいでおく必要があったのです。

■まとめると
・46金捨てで45をこじ開けてから、桂捨てを行うことで収束に入ることができる
・46金を行うために55玉型を実現しなければいけない
・55玉型を得るのは序(9手目の局面)か、【56飛、54香合、同銀、64玉、66飛、54玉、56香、55銀合、同香、同玉】とした局面のみ
・上記の手順中、66飛に74玉の変化は[72と]型でないと詰まない
・[83と⇒72と]の変換は角が必要。【71角、62香合、同角、同玉、72と】として行う
・55香に対して飛合を行ったときは、【同銀、64玉、56桂、55玉、67桂】以下。この手順は47金がいないと不詰
・よって83と型では56飛に香合、55香に角合が登場する。
・一旦72と型に変換すると、玉方は角合を出してこない(62に打って早詰のため)
・72と型では、56飛に54香合、55香に54飛合が登場する。今まで同銀~56桂で詰んでいた局面が、と金の移動によって詰まなくなっている。
・収束に入るまでに[22香⇒24香]の変換を行う必要がある。この手順は【15角、24飛合、同角、同香】として実現可能(つまり持ち駒に角が必要)

これらの手順を総合すると、
(飛→香→角)⇒[22香→24香への変換]⇒(飛→香→角)⇒[72と型への変換]⇒(飛→香→飛)⇒[55玉型を得る]⇒[46金捨て]⇒(飛→香→飛)⇒[45桂捨て]⇒収束
という手順が一意的に定まることが分かります。

■筆者の感想
83と⇒72との部分と、37金⇒46金の部分。
それぞれのカギを独立に進めることが可能なのですが、
持駒変換と相まって、どこで、どのようにというところが非常にややこしい。

83と型で、66飛に74玉の局面を不詰にすることは、この作品を成り立たせるためには必須ではないように思えます。74玉ではなく54玉と逃げると千日手になるからです。
しかし、83と型でこの手順を追ってみた解答者は、83と型で不詰になる74玉の局面が、72と型にして詰むようになっているとは一寸考えにくいかもしれません。
83と⇒72との移動は、角合の際に62角を打てるようにするだけではなく、左辺に逃げたときに63龍の横利きを通すためのものでもあったのです。
この8・9筋の変化と紛れの切り分け方に相当苦労したのではないかと思われます。

この変化が利くことを利用して一旦玉を55まで呼び出し、46金捨てで45をこじ開けて収束に向かう。
最後になってはじめて、15角、24飛合、同角、同香の交換を入れた意味がわかります。

変化紛れがそこまで難しいわけではないのに、頭が混乱しました。シンプルな割り切り方で本当に見事です。
「46金が見えやすいので~」という般若一族の叛乱サイトでの解説通りですが、
83と型と72と型を比較したとき、不利感があるように思えて実は、74玉の変化では72と型の方が有利であることが分かります。
持ち駒変換のサイクル中で仕事を入れようとする作品は、持ち駒変換が正しく(玉方が選択の余地なく)行われなければなりません。
A⇒B⇒C の持ち駒変換ではBの瞬間に仕事Xが成立するのに、
A⇒C と(玉方の意思で)局面変化させられると、仕事のタイミングを失うからです。

赤羽守さんの名作(17手詰)が作品の発端だと書いてありましたが、
むしろ私には上田吉一氏作の「積分」の方が近いのではないか、と思います。

しかし、よくこんな仕組みをいとも簡単に作ったなあ、と感心させられます。
と金の位置変換によって、飛合と角合の詰・不詰がうまくスイッチする機構。
奇跡的に変化と紛れを両立させる8・9筋の配置。
54中合をいとも簡単に出す、攻方52歩・玉方41桂。拍手です。

※一つ追加。
合駒制限で歩が立つので51と28に歩を配置したと首さんのサイトには書いてありますね。しかし、同時に、歩をピッタリ18枚使いきったとも書いてあります。
もしかしたら、37金くらいは37とにすると一枚減るかもしれませんね。
自陣成駒なので、原図の方が良いかもしれませんが。
[2014/12/07 16:39] | 詰将棋鑑賞 | トラックバック(0) | コメント(10)
詰将棋解析9:香の使い方
【8/26】宮原航氏作「ミルキーウェイ」を本文中に追加しました。
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お久しぶりです。だいぶ更新が滞ってしまったようで…
書きたいネタがないなあ、と思って探し回っていたら、かなり時間がたってしまったのです。

遅くなってしまいましたが、全国大会でいろいろな方とお話ができてよかったです。
皆様、本当にありがとうございました。

さて、香の限定打、についてのまとめ記事を書こうと思います。

※空港で急いで書いたら時間が来てしまった…。一時的に読めるようにアップしておきますが
図面や誤字脱字、改行のおかしいところはそのうち時期を見計らって修正します。すみません。

香の特質ですが、「成ったり駒を取ったりせずに王手をかけるとき、盤上にある駒を動かして王手を
かけることのできない駒」であるところだと思います。

歩は突く、桂馬は跳ねる、などの感触がありますが、香ではそのような動きを伴った感触は詰将棋では(攻め方の手としては)あり得ない。扱いが難しく、だからこそ素敵な駒でもあると思うのです。

頭に焼き付いている作品から少しづつ、テーマと仕組みで大まかに分けて並べてみたつもりです。
もう知っているよ、という方も多いとは思いますが、仕組みを再確認してもらえると嬉しいです。

短編では距離感を出したいけれど、玉の移動する変化を盛り込めないので必然、何かの工夫が必要になってきます。
例えば下の作品。

■小林敏樹氏作(詰将棋パラダイス1985.7)この詰2010より

39香、同馬、33飛、22玉、13飛成り、同玉、23角成まで7手詰。

他の駒で取られてはいけないために最遠打。

■原田清美氏作(詰将棋パラダイス1999.5)この詰2010より

28香、31玉、32飛、同玉、33角成、同玉、34香まで7手詰。

19角の利きを遮断する目的。初手28香を取ると馬が質駒になって早く詰んでしまいます。
こちらは最遠打ではないですが、美しい。軸駒の角を捨て去る鮮やかな収束です。

もちろん、これらは香車でなく角や飛車での表現も可能です(この詰2010に他の作品が数多く引用されています)。

風みどり氏がこの詰将棋がすごい!で、香の遠打に対する中合対策、というものを書かれていて、短編において非常に重宝する論考。

これら二つの作品は、途中で合駒された時の機構は一緒です。すなわち、飛車で合駒を食べてしまえば香が後ろ盾になって、玉はたじたじという仕組み。

その他で遠打を表現しようとすると、最近では次のような作品が。

■芹田修氏作(2012.12短コン)

19香、21玉、18馬、91龍、22歩、12玉、45馬まで7手詰。
香の遠打に関しては前例がいくつもある模様。ですが本作で注目したい点は、中合の変化処理。
2手目17桂合の変化は同香、21玉、45角成、91龍、13桂で詰む。歩合は二歩でできず、角は売り切れ。他の駒は前に利くので取って22に打って詰み。一枚でも多く持ち駒を入手すると詰む、という処理の方法。

超短編においてこれを取り入れすのは難しいですが、桂合の処理が非常にうまくできていると思いました。

ほかの短編で、守備駒を動かさないパターンはこちら。
■きしはじめ氏作 (詰将棋パラダイス1987年6月)


39香、38銀合、34飛、46玉、47銀、同銀生、36飛、同銀生、45馬、同銀、47銀まで11手詰

持駒に金がないと余詰が出にくいように思います。そういえば、他の作品でも香の限定打を作るときには金ではなくて銀が多い。
こういう理論は感覚ではなくデータで示せないものなのでしょうか。ともあれ本作、簡潔な配置で見事に描き切っており、脱帽です。
ちなみに香遠打と38中合の意味づけは2手目26玉の変化中、38に玉を逃がさないようにという明快なもの。



■小林敏樹氏作 (詰将棋パラダイス1995年6月)


56金、同玉、74角、66玉、55角、同玉、59香、66玉、58桂、55玉、54金、同玉、66桂まで13手詰

看寿賞。58桂を打たなければいけないという意味づけ。58香だと詰みません。


この作品ですごいところは、58合の変化では前に利く駒を取って詰む(桂馬は打てない!)のに、
57桂合の時は平凡に47桂以下詰んでしまうところ。



■自作(詰将棋パラダイス2009年5月、半期賞)

39香、36角合、45飛、26玉、18桂、同角成、28香、同馬、46飛、同馬、18桂まで11手詰
こんなところに自作を載せていいのか…?香打、合駒、つなぎ、駒の翻弄というリズムはきしはじめ氏作と一緒。

さて、少し香の枚数を増やしてみると、翻弄ものができます。

【翻弄の香打】

■三輪勝昭氏作 11手詰(詰将棋パラダイス2014年4月)

49香、同馬、48香、同馬、47香、同馬、36金、同馬、44龍、同玉、34馬 まで11手詰

2手目48歩合は47香として

36玉、46金、37玉、39香以下。

また、49香に47歩合なら36金以下、作意に短絡します。


変化紛れが少なめで、きれいにできている作品だと思います。
伊達悠さんが9手詰で香3連打を作図していたような気がするのですが、ぱっと図面が出てきません。
どなたかご存知でしたら教えてください。

この作は割合にシンプルな割り切り方をしているが、同じ作者でも化け物のように違う作品も。

少し前の作品ですが、高橋農園「看寿賞に選ばれなかった傑作」コーナーに
載っていて心底感動しました。

■三輪勝昭氏作 17手詰(詰将棋パラダイス1992年11月)

56香、同飛、55香、同飛、54香、同飛、63銀、41玉、53桂、同飛、52銀、同飛、53桂、同飛、63角成、同飛、51角成まで17手詰

初手57香は55歩合で不詰。56香と打っておけば64桂、53玉、54銀、64玉、42角成、74玉の時に76香と打てて詰む。


ちなみに55歩合は、取ると53歩合で、以下51角成、43玉、61馬、44玉の時に脱出しようという意図。
香が56にいれば35銀と打って詰みます。


左右の変化紛れを駆使した初手限定。シンプルなのにどうしてこうもうまくまとまるのでしょうか。
56香を入れることによって逃げ道がふさがり、55香に対して53歩合の変化も詰むようになっています。


収束も見慣れてはいるけれど、飛車の翻弄でテーマが一致していて完璧。
推敲しつくされた配置で、なぜ看寿賞を取れなかったのか不思議でなりません。

同じテーマでも、作者によって表現方法は異なります。格好の例が下図。

■中村雅哉氏作 11手詰(半期賞受賞作)

39香、同龍、38香、同龍、36香、同龍、46桂、同龍、35角成、同龍、53飛成まで11手詰

初手の意味づけは2手目37歩合の変化。36香、45玉、35角成、56玉、63飛成と進むと、38が埋まっている必要があるというわけです。


戻って、龍を39に呼んでおけば、38香に37歩合の変化は35角成!、同玉、33飛成以下詰み。


6手目45玉の変化でも、38が埋まっていることが詰みの条件になります。


変化が豪華で、同年の同氏作がなければ、看寿賞も狙えていたかもしれません。

【違う筋からの香打】

■上田吉一氏作 17手詰(極光21 第54番)

38香、同と、55飛成、26玉、29香、同と、35龍、同玉、38香、37飛合、27桂、同角成、37香、同馬、15飛、同馬、36金まで17手詰。

大駒の中合の部分から作り始めた、と本文には書いてありますが、3香の限定打はなかなか作れるものではありません。
ちなみに初手39香は、同様に進んで29香の瞬間に37玉で逃れ。29香に対して28歩合は15龍以下、28がふさがっているので詰みます。

どの作品においても、合駒された瞬間にそれを利用して詰ませるか合駒をとって持ち駒の差で詰ませるかしないといけません。

これに触発されて真似しているうちにできたのが次の自作(また自作!)

■自作

44馬、36玉、28桂、同と、48桂、同金、39香、同金、26馬、45玉、49香、同金、44馬、36玉、38香、同金、26馬、45玉、46歩、同桂、44馬、36玉、27龍、同玉、26馬まで25手詰

作品の解説はこちらを参照ください。


【違う段からの香打】

翻弄のほかに、一瞬の隙を狙った段を違えて打つ捨て駒としての香車も美しいです。
これは、合駒の変化処理と紛れ処理がもっときわどくなるパターン。作図はとても難しい。

■山田修司氏作 33手詰(近代将棋 1969年11月/「夢の華」73番)


42飛、51玉、63桂、同金、59と、同と、53香、同金、41飛成、62玉、61龍、73玉、72龍、84玉、94角成、同玉、92龍、93金合、83銀、95玉、93龍、86玉、87銀、同玉、96龍、88玉、89金、同玉、98龍、79玉、89金、69玉、78龍まで33手詰

伏線で53をあけ、59へと金を動かし、また閉じる。

※私が持っている、上田さんから拝借した「夢の華」の図面ページには、「74歩→74金」というメモ書きが施されています。これで余詰なしの模様。2014年8月号パラ、若島先生の寄稿より。

山田修司さんの作品は、意味づけが変化の中に隠れずに作意に出てくることが多いように思います。
本作も例にもれず、玉を9段目まで追いまわしていき、私などは途中がつなぎのような印象を受けました(失礼)。
しかし、「変化に隠すことが奥ゆかしい」という考え方が比較的新しいとしたら、素晴らしい作図技術でこの滑らかなつながりが実現できていることが分かります。

ちなみに、現代風に(つまり舞台を移さずに)同じ表現で作っているのがこちら。もう一回上田さん作です。

■上田吉一氏作 (極光21 第75番)

53香、52飛合、同香成、同玉、56香、同馬、51飛、同玉、53香、52飛合、41飛、同玉、44香、42銀合、52香成、同玉、51飛、同銀、43香成、41玉、31歩成、同角、32とまで21手詰

飛車合の中に挟まった56香打がすごい。この作品、実は極光21の中で私が最も気に入っている作品の一つ。

同じ筋で異なる段の香打。二つが離れていれば離れているほど作図は難しく、例えば山田さん作であれば59香に対して53歩合や香合とする変化をかなりきわどいところで分けないといけない。

さて、中編では上のような作り方でまとめるほかに、何もない空間からの香打という表現も可能。
この手数では変化紛れの自由度が増えるので、より一層距離感を出すことができるようになります。

■若島正氏作 21手詰(盤上のファンタジア第52番)

39香、35銀合、同香、22玉、33香成、14玉、24銀成、同玉、13角成、同玉、35馬、24飛合、15香、14桂合、22銀、12玉、14香、同飛、13馬、同飛、24桂まで21手詰

2手目に23玉では24銀成~35馬~17香で簡単。下図は35香の局面。

ここで35がかなめの升目になっているのですが、単純に35歩合では31角成、23玉、24銀成

同玉、35馬、15玉、16歩、同玉、18香、

27玉、17馬まで詰み。

また、38歩合、同香、35歩合には31桂成、23玉、24銀成、22玉(同玉は35馬から17香~33角成と引けるので詰み)


23香、12玉の瞬間に13歩と打てるので詰み(ここの局面で一歩の差を出している)。
以下の収束もきれいで、傑作としか言いようがありません。

同じ遠打の構造を使ったものが、次の傑作。

■相馬康幸氏作(看寿賞受賞作)


39香、22玉、44馬、33銀、34桂、12玉、13香、同桂、24桂、同歩、22桂成、同銀、同馬、同玉、23香
、同玉、32銀、12玉、23銀打、11玉、21銀成、同玉、32香成、11玉、22成香まで25手

22桂成と24桂の手順前後の傷(本来なら余詰とみなされるのでしょうが)はありますが、こんなにきれいな図面から完璧な手順は捨てられない。
初手の香打に対して桂合は売り切れ。歩の中合は同香、22玉、33銀、同桂、同馬、21玉、22歩、11玉、13香、12歩合(桂は売り切れ)、同玉、13香、同玉、25桂、12玉、13香まで。歩一枚の差で割り切っています(この手順で、歩が一枚足りないと詰まない)。

また、作意手順中の13香に同玉とすると、25桂、24玉、35馬、15玉、16銀、同玉、18香、27玉、17馬まで。この2つの理論によって香遠打と中合の利かない構造が出来上がっています。


【追記】最近の作品で素晴らしい出来のものをもう一つ書き忘れてました。

■宮原航氏作(2014年4月号短大)「ミルキーウェイ」

35銀、同玉、36歩、24玉、35歩、同玉、39香、38歩合、同香、同と、36歩、34玉、35香、24玉、46馬、15玉、14飛、同龍、16歩、24玉、33香成まで21手詰。

36香と打っても手の続く局面で、39香の遠打!これは、24玉と逃げられた時に


46馬、15玉、26銀、同玉、35馬、27玉、17馬として詰ませるためのもの。



惜しむべくは18香の配置が収束まで不発で終わってしまうところと、
38香に対して同とでも、24玉でも逃れてしまうところでしょうか。

17馬の詰上がりは相馬氏作・若島氏作と一緒ですが、本作の場合はそれよりも
違う段からの香歩打の攻防が、こんなにきれいに成立している、ということに驚きを禁じ得ません。
上二つのテーマが見事につながっています。
評点は5作中3位ですが、この月の中では(個人的に)ダントツに好みです。

他の怪物のような変化紛れの例だと、2年前の看寿賞作が有名ですね。
■真島隆志氏作(看寿賞受賞作)


69香、68歩合、同香、66桂合、同香、65桂合、同香、64銀合、同香、63銀合、同香成、同角、73香成
、同玉、82銀生、62玉、73銀打、53玉、56飛、44玉、33銀、35玉、24銀引生、25玉、37桂、24玉、42
馬、33銀合、25香、13玉、14歩、12玉、24桂、同銀、13歩成、同銀、23香成、同玉、53飛成、12玉、
13龍、同玉、25桂打、14玉、26桂、同と、15銀、23玉、33馬、12玉、13桂成、同玉、24銀、12玉、23
銀成、11玉、21歩成、同玉、22成銀まで59手詰

変化はあげるときりがないのですが、遠打のメカニズムとしては玉を下段に追った時に詰ませるためのもの。

初手69香に対して66歩合の変化を一例として挙げてみます。
72飛、53玉、42飛成、63玉、41馬、64玉、62龍、54玉、63馬、55玉、64馬、76玉、54馬以下。
ここで香が68にいれば77玉で逃れるというわけ。この局面において36馬と引く手があり、24桂はそれを防いでいると考えられますが…
こんな難解な作品、私は作れる気がしません。真島さんはきっととても棋力と気力のある方なのでしょう。

■ まとめ

香の限定打にもいろいろなまとめ方と目的があります。ある程度項目に分けて記述してみましたが、同じと分類されるものでも表現や見せたいものの浮かび上がらせ方によってずいぶんと異なる作品が出来上がる。

そして、作者の考えたことに思いをはせる。詰将棋の素敵なところだと思うのです。

■ おわりに

8月号の若島先生の論考に山田修二さん作が出ていて、香について一回まとめたいと思ったのが今回の動機になりました。しかし、少しずつ書いていたらかなり時間が。しかも頭に残っている作品しかわからず、比較的よく知られている作品が多く並んでしまったことかと思います。

しかし、複数局並べてみると意外に共通のまとめ方があったりするもの。書いていていろいろと勉強になったり、頭の整理になったりということもしょっちゅうです。それにしても、今回作品を提示しようとして、本当に豪華なメンバーしか思い浮かびませんでした。他にも傑作があって、自分の頭から漏れているだけかもしれませんが…

さて、今年度はかなり長い間離島に滞在し、ネットが使えない状態となりそうです。
その間ブログはお休みとなりますが、どうぞご理解いただけますよう。

ではでは。
[2014/08/08 11:50] | 詰将棋鑑賞 | トラックバック(0) | コメント(0)
詰将棋解析8:田島暁雄氏作(69手詰)
0.はじめに

先週は東京の会合、詰工房に参加。
初めてお会いした方がたくさんいらっしゃって、とても刺激になりました。
加えて、このブログが結構多くの人に読まれていることを知ったので
いい気になって記事を書いてみました。
そして、忙しいはずなのになぜか筆は進む。
お暇な方は、GW後半の空き時間にでも読んでみてください。

今回取り上げてみたのは、詰将棋メモの「正解者なし難解作」を勉強しようと思って見つけた作品
http://toybox.tea-nifty.com/memo/2009/01/post-5f4c.htmlをご覧ください)。

「詰将棋の欠片(http://hirotsume.blog.fc2.com/)」を頼りに見ただけでは
不利合駒がちょっと出てくるだけで、なぜ正解者なしだったのか理解できない。
しかし、当時の解説には
「発表当時、正解者なし。とにかく複雑難解な構想作品です。」と書いてある。
本当か?疑心暗鬼のまま、何とかひも解いてみようと少し鑑賞。

序盤を理解したので何とか解説を書きはじめましたが、
後半になってくるにつれて実はだれてきた。
その原因としては、構想が重なって一つの作品をなしているわけではなく、
いくつか山が分かれていることにあったようです。

とはいえ、実際に記述する構想や作品としては、
現代でもなかなかお目にかかれないような代物。頑張って味わってみましょう。


田島暁雄氏作(1971.11 近代将棋)塚田賞受賞作


1.不利合駒の2つの罠

初手から自然に進めてみます。厄介そうな初形ですが、57玉と逃げられたくないので
とりあえず飛車の横利きを通してみたくなるところ。ということで、自然に進めるなら
【39角、48歩合、同角、同と】



※48歩合のところ、57合だと
【58桂、65玉、74銀、64玉、54馬まで】
この辺はまだ見やすい。

上図より、67歩も自然なところ。
【67歩、同桂成、同馬、65玉、76馬、56玉】



ちなみに最後56玉に変えて64玉と下に逃げようとするのは、
【67飛、73玉、83歩成】以下。

さて、この【76馬、56玉】の局面が問題です。ここから普通に進めると
【57銀、45玉、54馬、35玉】
これは典型的な打歩詰の局面。



手順中57銀にかえて、67銀型なら打歩詰にはならなさそうですが…



ここから【36歩、46玉】と進めてみた局面が不思議に詰まない。
38桂なら同とですが、58には依然として香が利いています。

勘の鋭い方ならここでお分かりかもしれませんが、実は67銀や57銀の代わりに
57歩ならこの変化は詰んでいる。というのも、67銀でなく57歩なら、55香の利きを遮ることができるからです。
つまり、4手目まで進めた局面に戻って…



【67銀!、同桂成、同馬、65玉、76馬、56玉、57歩、45玉、54馬、35玉】



さっき想定した局面が出てきました。ここからなら簡単。
【36歩、46玉、38桂、同と、58桂まで】

最後の桂馬が非限定なので、これが作意のはずはありません。

※持駒の銀を先に使っているので、76馬に対する64玉の変化がちょっと難しく
なっています。すなわち、65玉まで進んだ局面から
【76馬、64玉、67飛、73玉、83歩成、同玉、63飛成】
以下。しかし、解答者にとっては踏み込みたくない変化。
このあたりの心理的に指しづらくするような作り方がすごいなあ、と思いました。

さて、すべての変化が詰んだところで再び。
勘の良い方なら2手目の歩合がおかしいことに気付くのではないでしょうか。
つまり、初手から



【39角、48銀合!、同角、同と、67銀、同桂成、同馬、65玉、76馬、56玉】



2手目に銀合されると、さっきの紛れ図に戻ってしまいました。
こうなると、さっき見た通り詰まない。鍵は2手戻したこの局面にあります。



76馬に代えて、以下
【74銀打、64玉、63銀成!、同玉、75桂、64玉】



何ともやりづらいですが、75桂に対して
73玉なら83歩成以下、53玉なら
【43と、同金、45桂、52玉、53香、41玉、51香成、同玉、42金】以下
難解ですが詰んでいるようです。ここでかなりの落伍者が出たのではないかと予想。

※近代将棋の解説再現を見る限り、ここまでたどり着いた解答者は結構いた模様です。
しかし、不利合駒に気付かずに2手目の合駒を歩合とし、67歩から74銀と攻めて
作意に還元してしまった可能性があります(後述)。

普通に進めると
【66香、65歩合、同香、同玉、76馬、56玉、57歩、45玉、54馬、35玉、36歩、46玉、58桂、同と、38桂】まで?

先ほどと同じで、どこがおかしかったのかもうお分かりでしょう。

【66香、65金合!】



もし65銀合なら
【同香、同玉、74銀打、75玉、76馬、64玉、54馬、75玉、76馬、64玉、67飛】
以下。ということで金合です。

おそらく作者の狙いは
「同一地点における打歩詰の誘致のため、2回の不利合駒を行う」
ことにあったようだと、ここにきてわかります。

上図から普通に進めると同じような局面となり、
【同香、同玉、76馬、56玉】



67金も、57金も詰まないことは、(金か銀かの違いはあれど)上に書いた紛れで見たとおりです。
ここで第二の関門が待ち構えていた。当時の解答者に関して何の情報もありませんが、
多くの人が打歩詰をいかに打開するかを考え、失敗したのではないでしょうか。

2.伏線の馬捨て





不利合駒の金を取った局面から別の攻め方をしてみると
【76銀、74玉、85金、73玉、83歩成、64玉】



最後、62玉なら手が続きそうですが、64玉とされると続かなくなる。

そこで…
【76銀、74玉、56馬!、同香、85金、73玉、83歩成、62玉】



さんざん読まされたあとの伏線手はなかなか見えにくい
(馬を消しておけば、最後64玉と逃げられても67飛と回って詰みます)。
序盤で働いた馬がここで邪魔駒になってしまうとは。
また、62玉に対しても67飛と回って手が続きそうですが、左辺に追ったときは
後述するように、23飛成という手が出て詰むことになっています。
つまり、ここで飛車を回ってしまうと23飛成ができずに詰まない仕組みになっているのです。難解。

3.打歩詰回避の回り道

さらに進めてみます。

【74桂、53玉、43と、同玉】



【45香、53玉、23飛成、同金、44銀、64玉】



また打歩詰が出てきました。序盤の不利合駒を理解しても、この変化を
読み飛ばして(後述の通り、43とに同金から作意に短絡してしまって)
引っかかった人も多いのかもしれません。

この打歩詰は解消できないので、8~9筋の攻防で回り道をする必要があります。





…平然と進めていますが、この辺はすでに変化・紛れだらけ。頭はパニック状態!
皆様、どこにトリックが仕掛けられていたのかわかりましたか?…

(この第3の関門ともいうべき仕掛け、私は全くわかりませんでした)





一度65金合した局面まで戻ります。



【65同香、同玉、76銀、74玉、86桂、84玉、94金、73玉、83金、62玉、74桂、53玉、43と】



なんという進め方でしょう。少し上の紛れ図と比較すると、
と金か、金かの違いはあれど、85金だけがきれいになくなった状態になっているのです。
作者がこれを意識的に取り入れたことは間違いない。

ここから【同玉】なら
【45香、53玉、23飛成、同金、44銀、64玉、65歩、74玉、86桂まで】



何と、歩が打てて詰むようになっています。巧妙。
よって、43とには【同金】となり、45桂以下収束への道が開ける、ということです。



ここから45桂以下37手もかかりますが、狙いとは関係ないところだと思われるので省略。

4.手順のまとめ


ということで、まとめて作意を並べてみます。



【39角、48銀合、同角、同と、67銀、同桂成、同馬、65玉】



【74銀打、64玉、63銀成、同玉、75桂、64玉】



【66香、65金合、同香、同玉】


【76銀、74玉、86桂、84玉、94金、73玉、83金、62玉、74桂、53玉、43と、同金】



【45桂、42玉、34桂、41玉、31と、同玉、22と、同金、同桂成、同玉、12歩成、31玉】



【33香、41玉、32香成、同玉、23飛成、同玉、13香成、32玉、22と、41玉、32金、52玉、
53歩、同金、同桂成、同玉、63金、43玉、33金、同玉、23成香、43玉、44歩、42玉、32と】
まで69手詰。



収束はかなり冗長な感じがありますが、前半の56馬伏線のために必要となった27飛の配置を
さばき切り、数々の変化紛れを切り分けた3段目までで持ち歩を使って収束。
このくらいが限界だったのでしょうか。


5.なぜ本作は正解者なしだったのか(推測)


本作では不利合駒を気付かせにくくしている原因として、2手目の48歩合の変化があります。
すなわち、下図は48歩合に同角、同とと応じた局面。



ここでは最初、【67銀】以下詰むという話を書いたのですが、実は作意手順に則って
【67歩、同桂成、同馬、65玉、74銀打、64玉、63銀成、同玉、75桂、64玉】



以下、作意に還元してしまう罠があるのです。
また、ここから66香に65歩合とすると、そのまま54馬~36歩が打てて29手で詰めあがってしまう。
つまり、不利合駒に全く気付かずに進めてもそれなりに長さになってしまうのです。
ここが一つ目の罠と思われます。

しかし、2度の不利合駒だけであれば、くぐり抜けた人はいたのではないか。

問題はそのあとの56馬捨て(これはまだ見えやすいか)や、
86桂~95金の回り道にもあったのではないでしょうか。
これらの伏線は不利合駒とは独立で作られているものの、
変化・紛れを読み切るのが相当に大変な部分。
例えば、74玉型で85金以下普通に進めてしまい、43とに同玉を詰むものとして
変化を読み飛ばしてしまったとしたら…
誤解者が出るのも無理はないところです。

現代の目で見ると、一つ一つの伏線や罠については見たことがないわけではありませんが、
これらを同時に見破ることは、並大抵のことではありません。
不利合駒が希少だったと思われる当時、2度にわたる罠を設けた作者の構想の勝利でもある。
レベルの高い、受賞にふさわしい作品と思います。

6.筆者の感想と勝手な妄想

なるほど、難解な作品です。構想に加えて、相当な腕力がないと作れない。

前半の不利合駒2回は同一地点で行われていますが、例えば若島正氏作(2014.1_大学院:参考図参照)や、
相馬慎一氏作(2013.10_81puzzler:参考図およびリンクを参照)と比較したときに、
これはグループ不利合駒ということはできません(2つの合駒は同じ意味付けで、独立に選択されるため)。
仮に、本作初形の持ち駒である銀を合駒で、逆算で出すことができていたら、これは立派な「グループ不利合駒」
第一号局だったはずなのですが…



作者の頭にはあったけれど、逆算が限界だったのでしょうか。
それとも、論理はそこまで気にされなかったのでしょうか。

※ただ、上図で仮に持ち駒が歩2枚だと、67歩には65玉で詰まないようです。
とすると、この構図では銀銀のグループ不利合を出すのは無理なので、
やっぱり作者は構想に気付いていながらもあきらめたんでしょうか…
作者ご本人に聞いてみないと、この辺は不明ですね。

※参考とした2題の図面をあげておきます。若島作は持ち駒歩歩や歩飛で詰むけれど飛飛では詰まない
局面を意識的に作り出した作品(その飛車を連続中合で出したのが作者のこだわり!)、
相馬作は3回にわたる合駒の選択を有機的につなげて、玉方が打歩詰に誘導する作品です。


若島正氏作(詰将棋パラダイス大学院 2014.4)
【参考:ベイと祭りと詰将棋「第281回詰工房例会報告」


相馬慎一氏作(81puzzler特別出題、2013.12)
【参考:81puzzler

今から40年も前、詰将棋界のトレンドがどうだったのかは私にはわかりません。
不利合駒の後のまとめ方を見ると、作者は前半部分に見られる論理性よりも
むしろ「変化・紛れの複雑な局面に伏線を入れ込むこと」を重視していたのではないでしょうか。
作者がこの作品で「正解者なし」を狙っていたとしたら、目論見は見事に成功したわけです。
冒頭に「だれている印象を受けた」と書きましたが、このあたりが現代の詰将棋との
大きな感覚の差ではないかと思われます。

ということで、論理の組み合わせという点で見ると、本作は少し弱いのではないか、というのが
私の感想。同じ素材でも、時代によって仕上げ方も変わってきますよね。

かつて解析した今井光作品(→こちらを参照)も実は、この作品と同時期に発表されたようです。
すさまじい論理でつながっているあちらの作品は無受賞で、この時に塚田賞を受賞したのがこの作品。
現代の目で見ると、論理構造を重視した今井光作品のほうが輝いて見えますが、
こちらの作品も受賞にふさわしい傑作であることは間違いありません。

7.最後に
本稿の執筆に当たっては詰将棋の欠片(→こちら)
をじっくりと読ませていただきました。厚く御礼申し上げます。

ではでは。
[2014/04/30 20:53] | 詰将棋鑑賞 | トラックバック(0) | コメント(0)
2013年気に入った作品リスト
実に2カ月近くもブログを放置していたようです。
素材が特になかったのと、考える時間がなかったのと…
時間がないのは言い訳ですが。

どこかでやっているかもしれない昨年度のベスト詰将棋ですが、
私は将棋世界やネットの全てに目を通しているわけではないので
そんな大層なタイトルで記事を書けるわけではありません。
昨年度に限って言えば、パラにしても帰国した10月にざくっと見たにすぎないので、
特に難しい作品はしゃぶりつくせていません
(もともと、長手数作品は理解できないことが多いですが)。
ということで、これからちょっとづつ感想を書いてみる作品も、
自力で解いたものはほとんどない。

今年は評点が全体的に高く、看寿賞の選考などを見ても
自分が推したい作品が出てこない可能性が充分にあります。
そうなると、お気に入りの作品を掘り起こせなくなってしまいそうなので…。
何としてでも、名作だと感じたものを後世に残していく努力はしたい。

(ちょっと関係ないですが、個人的には、ある程度評点が高かったら、そこから上
―例えば2.7か2.8か、とか―で争うのは、作品の本質と関連が薄いと感じます)

というわけで、自分で後で見返すことができるようにするためにも、
個人的に気に入った!という作品をリストアップしていきます。順不同です。
いつものように解析できないのが残念ですが、鑑賞するだけで
見事な作品であることを感じたもの(※個人的に)ばかりなので、忘れかけていた方も是非。

なお、上でもちらっと書きましたが、看寿賞候補の予想とは無関係です。

※作者の方、勝手に図面掲載してしまっています。不都合があればご連絡ください。
いつでも削除いたしますので。

深和敬斗氏作(2013年1月、デパート)



24桂、同銀、22歩成、13玉、25桂、同銀左、15香、同銀、14歩、同銀、12と、同玉、
13歩、同玉、22銀、12玉、24桂、同銀、13歩、同銀、11銀成まで21手。

数年前の馬場光信氏の将棋世界の作品(だったと思うのですが…)が
似たような作品で、25と15の銀を桂香を打って翻弄するものだったように
記憶しています。本作はそれをさらに発展させた作品。
44角によって緩く縛った33馬でやりたいことを実現できています。こんな作品が作りたい。

田島秀男氏作(2013年4月、解答選手権チャンピオン戦)

tajima解答選手権2013

68香、同金、58桂、同金左、78桂、同金、69香、同金左、68香、同金右、
58桂、同金、67香、同飛成、78桂、同龍、56龍まで17手詰

以前記事にして取り上げたのですが、脱帽です。
限界を示した詰将棋の一つと思います。
しかしこのような構図を如何にしてこの作者は見つけるのでしょうか。

三輪勝昭氏作(2013年4月、高校)



22銀、同玉、11銀生、23玉、33歩成、同玉、32銀成、同玉、24桂、同龍、
22銀成、同龍、41龍、同玉、23馬、同龍、31金まで17手。

パラを見返していて、何と三輪さん作の多いこと!
個人的には本作が抜きん出てすばらしい作品と感じました。
手筋ものといえばそうなのですが、味が抜群にいい。
33歩成や24桂といった捨て駒はどのようにして出てくるのでしょうか。

飯尾晃氏作(2013年5月、高校)



56銀、36玉、45銀、同玉、56角、36玉、47角、45玉、36角、34玉、
45角、25玉、36龍、同歩、34角、同玉、35金まで17手。

同じ作者の6月号デパートにも同じ香りを感じます。
角のダンス、最後まで緩むことない手順。
駒数が多くて評点で損をしたと思われますが、
この素材をこの形にしてまで67銀消去を序に設けたことや、
角の動きを最大限に強調しているところなど、
作者の作品の仕上げ方のうまさを感じさせます。

武島宏明氏作(2013年7月、高校)



51角、同銀、53飛成、43金合、25桂、24玉、46角、14玉、
34龍、同金、23龍、同玉、13角成まで13手。

あまりにもきれいで作者ご本人のブログにコメントを残してしまった…。
この作者、作品の質×量がすごい。
いったいどうやって時間を取っているのでしょうか。

若島正氏作(2013年7月、短大)



44桂、61玉、41飛、51飛合、同飛成、同玉、53飛、41玉、52飛成、31玉、
51龍、41桂合、32桂成、同玉、22金、33玉、55角、同桂、
34歩、43玉、53歩成、同桂、65角、同桂、54龍まで21手。

不利合駒ですが、成香の代わりに龍を作らせて、斜め後ろに利きを作らせて
打歩詰に誘導する構想。つまり、成駒での飛先飛香。でもそんなことより、
可能な限りの最短手数で合駒~打歩詰の局面をつなげたこと、収束のきれいなこと!

北浜健介氏作(2013年8月、パラ特別懸賞)



43桂成、同角、33香、22玉、32香成、同玉、34香、同角、21銀生、23玉、
35桂、同金、12銀生、32玉、23銀成、同角、33香、22玉、11龍、同玉、
32香成、12玉、22角成まで23手。

この月の北浜先生の懸賞問題は2題とも自力で解きました。
どちらも素晴らしい作品と思いましたが、私はこちらが好みです。
特に、頭8手のきれいさがずっと頭に残りました。

鈴川優希氏作(2013年9月、短大)



43龍、42飛合、63角、51玉、42龍、同玉、52飛、43玉、54飛成、32玉、
52龍、42飛合、同龍、同玉、52飛、43玉、35桂、34玉、33桂成、同玉、
51角、34玉、24角成、同玉、22飛成、35玉、36角成、同玉、26龍まで29手。

龍が一度消えて、また現れる。配置の悪さは少し気になるかな?というところですが、
きっと収束の付け方、さぞかし苦労されたのでしょう。
一度自分で作ってみたかったテーマ、先取りされました。

宮原航氏作(2013年10月、高校)



13角、58玉、69金、同龍、57角成、同玉、93角、58玉、
49金、同龍、57角成、同玉、68金まで13手。

発表時には一瞬で解けた記憶があります。
無駄な飾り付けが一切ない。けれど、それがいい。
難しくしないことで美しくなる、そんな芸術的な作品だと思います。

芹田修氏作(2013年11月、デパート)



27香、同飛生、17桂、同飛生、35飛、26玉、25飛、同玉、27香、同飛生、
43馬、14玉、26桂、同飛生、25馬、同飛、26桂、同飛、15歩、25玉、35金まで21手。

香をたくさん持っているのに、これしか進め方がないゆえの玉方飛生。
以前似たような形で作ろうとして、どこかで飛を成られて
詰まなくなってしまって苦労したのですが、
本作は6段目で成生を決定できることが大きく、絶妙の配置で仕上がっています。

武島宏明氏作(2013年12月、デパート)



65龍、45歩合、同龍、24玉、34龍、15玉、45龍、24玉、15龍、同玉、
16歩、24玉、34馬まで13手。

最後にもう一作、この作者の作品を。
柳原さんが「何度並べ替えしても飽きない」と短評に書いている通りの作品。
すさまじい作品を連発している作者ですが、こんな作品を投稿されているのを見ると、
詰将棋に対する愛着を感じます。
通常キズなしでこのような作品を作るのはとても難しいと思うのですが、
迂回手順や、有効か無駄かわからないような合駒、変長、すべて排除したのが作者の手腕。

その他

以上、適当に選んだために11作と中途半端な数字になりました。
おまけに、手数がかなりかたまっているのですが、意識しているわけではありません。念のため。
単純に、私のしっかり鑑賞できる範囲がそのくらいということです。。。

ここには書いていないのですが、ネット上で非常に話題になっていた
久保紀貴作「位置エネルギー」(詰将棋パラダイス2013年11月号大学)、
宮原航氏作(詰将棋パラダイス2013年7月号中学)、
相馬慎一作(81puzzlerで出題)などもすばらしい作品と思います
(単に、他で非常に盛り上がっていたのでここで取り上げていないだけです)。

ということで、長編も解読して記事を書かなければいけないのですが、
しっかり見ようとすると非常にエネルギーを要するため、(可能であれば)また後日ということで。

ではでは。
[2014/04/23 23:23] | 詰将棋鑑賞 | トラックバック(0) | コメント(4)
詰将棋解析7:井上徹也氏作(849手詰)「涛龍」
0.はじめに

今日は超長編を解読します。
※図面が調整できずに大きいままですが、お許し下さい。

昨年度の看寿賞受賞作ということでかなり有名かと思うのですが、
私自身仕組みがよくわからなかったこと、また書いてほしいという依頼を以前、知り合いの方からメールでいただいたことから、
ブログを書きつつ私もこの作品について勉強させていただくことにしました。

リクエストをいただいてから一年ほどたっていて、何と仕事の遅いこと。


井上徹也氏作(849手詰)「涛龍」
詰将棋パラダイス2012年7月号(半期賞・看寿賞)

看寿賞受賞作であっても、実は詳しく解説されているところは少ない。
全詰連の紹介ページも詰将棋パラダイスのホームページも最近は看寿賞作品の図面のみ展示に
なってしまい、本誌を取っていない人には正直よくわからない。

詰将棋の世界に入っていない人も見るからこそ、作品に解説を付けないと、作品のどういうところが評価されて、どのように素晴らしかったのかが伝わらないと思うのですが…(これはあまり関係ない愚痴です)。
ちなみに本誌の解説でも、多くの作品はページ数が限られていて、奥深くまでは触れられていることは少ない。

とりあえず、本題に入ります。

1.作意手順の流れ
※とてつもなく長いので、手順は適宜省略させていただきました。

1-1.序
【53飛、24玉、25銀、同玉、23飛成、24銀合、26馬、同玉、24龍、37玉、27龍、46玉、47龍、55玉、56龍、44玉、54龍、33玉、43龍、24玉】(20手)



全駒使用で合駒できないのを確認して、飛打からの回転が始まります。
3手目13銀打として作意を省略できそうですが、14玉で逃れます。
43龍型で12の香を取る必要があります。

26馬と捨てた後は左下の駒と龍・玉以外は一切動かないので『xx龍、yy玉』として局面を表しています。

※ここまでの変化ですが、
まず2手目に14玉は23銀、25玉、34銀生、同玉、43角成以下。この変化のために初手53飛は限定。
56龍に64玉は【54龍、73玉、83歩成、62玉】として、銀を持っているので詰みます。
また、途中の43龍に対して22玉はこれも23に銀を打って簡単。

1-2.銀⇒香⇒角 の持駒変換

【13銀、同香、同龍、25玉】(24手)

『13龍、25玉』型
ここから直接27香は無謀で、16玉として後が続かない。
持った香を一度銀に変え、さらにもう一周して戻ってくる必要があります。
『43龍、24玉』型でようやく27香を打てます。
※途中の変化ですが、
『23龍、24合駒』型では
26銀や香に同桂と取ると43角成として簡単に詰むのに、
『43龍、24玉』型では
27香、26角合、同香、同桂として不詰。13龍には34玉として逃れるためです。
この34桂の配置がうますぎる。

以下、持駒を角に変換します。
【23龍、24銀合、26香、同玉、24龍、37玉、27龍、46玉、47龍、55玉、56龍、44玉、54龍、33玉、43龍、24玉、13龍、25玉、23龍、24香合、26銀、同玉、24龍、37玉、27龍、46玉、47龍、55玉、56龍、44玉、54龍、33玉、43龍、24玉、27香、26角合、13龍、25玉、26香、同玉、24龍、37玉、27龍、46玉、47龍、55玉、56龍、44玉】(72手)


1-3.歩はがし
【55角、53玉、77角、42玉、33角成、同玉】(78手)

55-77-33と角が舞い、と金を一枚はがします。

付記しておきますと、
『56龍、44玉』型から、55角、53玉、77角と空き王手をした瞬間
【62玉】という変化があります。これは
【63歩、同玉、74銀、62玉、73銀成、同玉、53龍】以下詰みます(95歩はこの変化のための配置か)。

77で得た歩を、13ではじめに得た香車と同様に26に叩いて回転させます。

1-4.繰り返す

1-1から1-3を繰り返し、88と、99とを同様にはがします。
すなわち、上図より
【53龍、24玉、13龍、25玉、23龍、24銀合、26歩、同玉、24龍、37玉、27龍、46玉、47龍、55玉、56龍、44玉、54龍、33玉、43龍、24玉、13龍、25玉、23龍、24香合、26銀、同玉、24龍、37玉、27龍、46玉、47龍、55玉、56龍、44玉、54龍、33玉、43龍、24玉、27香、26角合、13龍、25玉、26香、同玉、24龍、37玉、27龍、46玉、47龍、55玉、56龍、44玉、55角、53玉、88角、42玉、33角成、同玉】(136手)

【53龍、24玉、…同一手順で99とをはがす…33角成、同玉】(194手)

【53龍、24玉、…56龍、44玉】(246手)


1-5.左下から角を打ち、質駒を引っ張ってそれをとる
上図より
【99角、88銀合、同角、同歩成、54龍、33玉】(252手)

【43龍、24玉、…55角、53玉、88角、42玉、33角成、同玉】(292手)

こうして、194手目の局面から87歩が1枚はがれました。これを繰り返します。

※歩とと金の群を消す順番ですが、歩合をすると手数が長くなるため、先に歩が動きます。そのほかは特に限定されていないようで、88と77、どちらからでも良いようです。また、78のと金も88と77、どちらへ動いて消えても良いようです。

1-6.同様にして76歩、86と、97と、78とを消去する
【99角、77銀合、同角、同歩、54龍…56龍、44玉、55角、53玉、77角、42玉、33角成、同玉】(390手)

【53龍、24玉…56龍、44玉】(442手)
【99角、88歩合、同角、同と右、54龍…56龍、44玉、55角、53玉、77角、42玉、33角成、同玉】(506手)

【53龍、24玉…56龍、44玉】(558手)
【99角、88歩合、同角、同と、54龍…56龍、44玉、55角、53玉、88角、42玉、33角成、同玉】(622手)

【53龍、24玉…56龍、44玉】(674手)
【88角、77歩合、同角、同と、54龍…56龍、44玉、55角、53玉、77角、42玉、33角成、同玉】(738手)

【53龍、24玉…56龍、44玉】(790手)


1-7.66銀と出てくる⇒収束
【77角、66歩合、同角、同銀】(794手)

『56龍、44玉』型での55角打を不可能にすると同時に、収束『24龍、37玉』型での55角打での質駒の役割をなしている。
まるで、生物の心臓の動きが止まったときの潅流(reperfusion)みたいです(ちょっと違うか)。体内(盤面)を駆け巡っていた血(龍)の流れは、致命傷を負ったのちもしばらくはぐるぐるしているのですが、心臓がやられるとポンプがないために循環できなくなり、やがて止まる(と、習った記憶があるのですが、あってますか?)。

以下は同じように歩⇒銀⇒香⇒角の持駒変換を行ったのちに
55角と見事な捨て駒が出て自然に収束します。

【54龍、33玉、43龍、24玉…24龍、37玉】(842手)

【55角、同銀、27龍、48玉、47龍、39玉、38龍】まで849手詰。

75銀が66へ動いたことで、56龍に対する64玉の変化で注記があるのですが、
2.にまとめて書いています。それにしても見事な作品。


2.配置に関する考察

さて、この作品に関して分からなかったことをいくつか解読していきます。

2-1.76歩⇒76とで飛躍的に手数が伸びるのにそうできない理由

どうやら『56龍、44玉』型から
【99角、66歩合、同角、同と】とすると、もう一周してきたときに
56龍を取られてしまうためのようです。

2-2.作意では全然働かない、「96と」「89銀」の意味

75から銀が移動したとき(最後)の、56龍に対する64玉の変化で関わってきます。すなわち、812手目(66銀型+香)で『56龍、64玉』以下
【54龍、75玉、74龍、86玉、76龍、97玉、98香】として詰ませるための配置です。



96とがある理由は、最後の周の『43龍、24玉+持駒香』型から
【27香、26角合、同香、同桂】とする紛れ順が関わっています。以下、
【13龍、34玉、56角打、44玉、43龍、55玉、45龍、64玉、54龍、75玉、74龍、86玉、76龍、97玉】と追う筋があります。
これは持駒なしで上の図『76龍、97玉』と左下の形は同一で、最後の98香を持っていないために逃れています。
(下線部は2/27加筆。平井さん、ありがとうございます)


では、次の問はどうでしょう。

2-3.87歩⇒87とで飛躍的に手数が伸びるのに、そうできない理由

上で説明した変化が密接にかかわっています。
87歩⇒87との配置で、77、88、99のと金をすべて取り払い、99角としたときの図。

ここから、97と・86とのみを消去して、いきなり玉方が収束に誘導してしまいます(手順省略)。


上図より
【66歩合、同角、同銀】

75銀⇒66銀という、連取りをストップさせる動きは、玉方が選択権を持っています。

さて、ここから『47龍、55玉』型へすすんでみると…(手順省略)



【56龍、64玉、54龍、75玉、74龍、86玉、76龍、97玉】
不詰。このため、87はと金ではなく歩にしているようです。


2-4.その他

『56龍、44玉』の局面では

【55角、53玉、33角成】という紛れがあるので
そもそも62のスペースを空けておかないと作意が成立しません。
【55角、53玉、28角、42玉】も危険ですが不詰。

28にリスキーな香を置かなければならない理由は、
一番最初の手順【13銀、同香、同龍、25玉】のときに28香と打たれるのを防ぐため。
玉方29となどでこの手順を防ごうとすると、収束の55角に対して48玉で不詰。

また、この28香を置かずに、13で取る駒を歩にしてもよさそうですが、そうすると
初形局面で玉方が香を持っていることになり、53飛に対して33香合されて
初手が成り立たなくなってしまいます。
これは玉を33に配置して初手43飛とすればいいのですが、井上さんはあえて23玉型を選択した。

つまり、28香配置は初手53飛の成立に関わりがあると考えられます。思うに、井上さんはこの初手限定打を入れることにかなりこだわったのではないでしょうか。

こうしてぎりぎりで、全ての駒が余すことなく使われている。限界に近い詰将棋と思います。

3.おわりに

井上さんの最近の活躍ぶりは目を見張らんばかり。

ただ、シンメトリーや涛龍を見ていると、決して理解不可能な領域ではない(というとお前が作れ、と言われそうですが…無理です)というか。
つまり、木星の旅や乱、はたまた高木秀次作品のような難解さ・複雑さがあるわけではない。
本作も盤面がきれいに使い分けられていて、(決して簡単ではないのですが)複雑怪奇な枝分かれを使わなくても変化紛れの切り分けが可能である。
しかし、その構図を見つけ出して組み立てるところがすごいなあと思います。

!caution!
検討ソフトがなく、また現在海外で盤駒も手元にないため、かなりの割合で間違いを犯しています。
もし気づいた方がいらっしゃいましたらご指摘いただけると幸いです。
すぐには難しいかもしれませんが、できる限り速やかに加筆修正させていただきます。


またもや長くなってしまいましたが、今日はこのあたりで。
[2014/02/23 12:34] | 詰将棋鑑賞 | トラックバック(0) | コメント(2)
詰将棋解析6:若島正作(詰将棋解答選手権2008年チャンピオン戦)
一ヶ月以上経過して上に広告が出てしまいました…

とりあえず無事に、穏やかな冬休みを過ごせています。

若島正作、37手詰



2008年の詰将棋解答選手権のチャンピオン戦に出題され、正解者ゼロの作品。

1.角合によって馬筋を遮断して打歩詰を誘致する
・まず初手から
【83歩成、94玉】

【85銀、95玉、97飛、同馬、96歩、同馬、84銀、94玉】
95歩と打てれば簡単ですが、あいにく持駒なし。


44に落ちていると金を拾えば簡単そう。2つ上の局面から
44飛と、と金を取りつつ王手をかけてみます。すると、今度は64角合。

以下同様に進めると
【85銀、95玉、97飛、同角不成】


この打歩詰が解消できない。

これが、第1テーマ:「馬筋を遮断して角合し、その角を不成とすることで打歩詰を誘致する」(詰将棋メモより引用)
に相当するもののようです。
※ただ、解いていない立場から言うのも失礼かもしれませんが、私にはこのときの64角合は自然な応手に映りました。

上図で、44の駒が飛でなく龍であれば84龍までの1手詰なので、角合による打歩詰誘致にも負けない気がします。
つまり、44のと金を龍で取るために一旦33飛成としておけばいいのではないか…
もちろん同馬であれば、83歩成以下97飛と回って簡単に詰みます。

そこで、初手から
【33飛成】

1.
これに対して43歩合は83歩成、94玉、44龍、以下似たような局面となり、
「攻め方が一歩多く持っている」+「44の駒が龍」なので詰みます。
すなわち
【43歩合、83歩成、94玉、44龍】で、


・もし【同歩】なら
【85銀、95玉、97飛、同馬、96歩、同馬、84銀、94玉、95歩、同馬、93銀成まで】


・もし【64角合】なら
【85銀、95玉、97飛、同角成、84龍まで】


※ちなみに43歩合の代わりに香合ができれば逆王手がかかって逃れそうですが、あっさり同龍と切って
取った香を96で使うことができるので詰みます。

2.
73歩合は83歩成、94玉、44龍以下馬筋が97まで効いていて、やはり詰み。

3.
53角合は同龍、同馬、83歩成以下、角を持っているので簡単。

4.
ここまで来てようやく43と、の移動中合がでてきます。初手から
【33飛成、43と、同龍、53角合】
44とが消えていれば、53角合を取ることができません。


同龍は同馬で、逆王手がかかるからです。
この局面から角を取らずに【83歩成、94玉、54龍】と進行させてみると、今度は【74歩合】と受けられます。


以下同様に
【85銀、95玉、97飛、同角不成】と進めると、74歩合のせいで龍が84へ効いていないために不詰。


これらの各不詰局面の中から、次のページへ行くための手段を見つけることが相当に難しかったと予想されます。


(再掲初形)

初手から
【33飛成、43と、同龍、53角、83歩成、94玉】


【84と、同玉、87飛、95玉、85飛、94玉】

この作品は前半、後半のどちらから作ったのでしょうか。
つなぎの部分と考えられるこの6手の成立に、唖然。

※ちなみに87飛に対して合駒が効きそうですが、角が動くと43龍の筋が
通ってきますので、簡単に詰みます。

2.角の移動合で逃れようとする~収束

ここから、龍の活用を図りつつ攻めていきます。
【54龍、64歩合、95銀、93玉、63龍、73歩合、84銀、94玉、83銀不成、93玉、94歩、同桂、92銀成、同玉、72龍】


角のラインをすり抜けます。以下は高い合駒は簡単に詰み、香合なども94桂の質駒があるので83龍行、91玉、94龍以下。

一気に進めましたが、途中84銀に対して92玉は95飛、94合(歩は二歩なのでそれ以外)、同龍、同桂、72龍以下詰みます。
他の手もいくつかありますが、どれも簡単に詰んでしまいます。他に受け手は?





…ここでひらめいたでしょうか。角を移動合させると同じように追っても逃れているということに…





同じように85飛、94玉の局面から

(再掲)
【54龍、64角、95銀、93玉、63龍、73角、84銀、94玉、83銀不成、93玉、94歩、同桂、92銀成、同玉、72龍、82角

以下、
【83飛成、91玉、94龍、93香合、同龍、同角


なんと、序盤から忘れ去られていた48の王に逆王手がかかっています。こんな仕掛けは他の作品で見たことがない。

これが若島先生の織り込んだ第2テーマ:「盤面A地点にある駒Xを移動してB地点に合駒しようとするとき、 そのA→Bの経路の途中の地点Cにも合駒が必要なら、XはA→C→Bと移動合の連続で動くことになる(つまり、Cに他の合駒をすると、その合駒が邪魔をして、XがAからBに移動できない)」(詰将棋メモより引用)
つまり、93に角を持ってくるために途中の全ての合駒(64、73、82)を角の移動合にする意味付けです。

仕方ないので攻め方をどこかでかえるしかなさそうです。
73角、63龍型から収束に入ります。


先ほどの紛れの途中図(63龍、73角と指した局面)より
【同龍、同桂、84銀、92玉、95飛、94桂打合】


※ここで94香合は74角、91玉、94飛、同桂、92歩、82玉、83銀成、71玉、72香、62玉、63角成まで2手短い。
逆に、95飛よりも先に83角を決めてしまうと、飛車の王手に香合されて詰まなくなります。
以下は92に歩を打って51にいた金を清算して詰み。

最初から作意をまとめて並べておきます。

【再掲初形】

【33飛成、43と、同龍、53角、83歩成、94玉】

【84と、同玉、87飛、95玉、85飛、94玉】

【54龍、64角、95銀、93玉、63龍、73角】

【同龍、同桂、84銀、92玉、95飛、94桂打合】

【83角、91玉、94飛、同桂、92歩、82玉、74桂、71玉、61銀成、同金、同角成、同玉、62金】
まで37手詰。


3.筆者の感想

変化紛れは少ないものの、読む部分は全て主題に関わっている。

角の移動合いから逆王手のテーマ部分は、攻め方の龍が2枚あって危険な紛れが多い。
舞台を移さずに作るのは相当ぎりぎりだったと予想されます。
双玉は香のラインを利用する序盤だけでなく、角の移動合いにも一役買っていて、非常に魅力を感じます。

筆者が気になったのは、意味づけが異なるものの、53角~64角の移動は前半、後半どちらでも
出てくるという点。実際に解いていないので判断できないのですが、
前半戦の96地点の打歩絡みの攻防を読みきった後に54龍と指してみると、
64角の移動合は自然に予想できてしまうかもしれません。
ただ、見方を変えれば、異なる2つのテーマを1つの駒の動きで統一させ、
作品全体をまとめているとも解釈できます。

看寿賞の選考に当然残っていた本作ですが、「独創性はあるが、完成度として他の作品の方が上(意訳)」と
いう選考委員の評があったのには驚きました。
正算で作ったような駒取りの収束や76成桂配置のことを指しているのかもしれませんが、
やりたいことを最小限に切り詰めた結果がこの配置なのでしょう。
難解さが欠けていても、やりたいことを表現できている本作は、文句のつけようがないと思うのですが。
特に、つなぎの6手の部分を自然に成立させているところはとても真似できません。

惜しむべくは、本作はリアルタイムでの出題時に誰にも解かれなかったということ。
作者も望んでいた結果ではないのでは。作品がかわいそうに思えてきます。
本作の認知度がどのくらいかわからないのですが,知らない方がいたらもったいないことだと思い、
紹介させていただきました。

4.おわりに
この作品についてはご本人が詳細な記事をブログで書かれていた記憶があるのですが、
いつしかブログが消えてしまっていました。

本作の解説が載っているのは「詰将棋解答選手権2004-2008」のみかと思うのですが、
私はこの本を持っていませんので、以前サイトやパラの本誌で解答を読んだときの記憶しか残っていません。

書いてから気づきましたが、本人がブログを削除されたのは、作品集の価値を高めるためだったのかもしれません。
もしそのような事情があった場合は、本記事は速やかに削除させていただきますので、
連絡をいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。

参照:詰将棋メモ「平成20年度看寿賞」
http://toybox.tea-nifty.com/memo/2008/07/post_b7ab.html
[2013/12/23 15:44] | 詰将棋鑑賞 | トラックバック(0) | コメント(3)
中村雅哉作(詰将棋パラダイス2007年9月号高校)
今回は一つの作品を考察するだけではなく、少し比較を加えてみようと思います。
メインの中村作はちょっと待って、まずこちらの2作品をご覧ください。

上田吉一作(将棋世界2004年5月)

44桂、53玉、33飛成、43桂合、52桂成、同歩、45桂、同飛、44龍、同飛、54歩、同飛、62馬まで13手詰。

詰将棋サロンに私の初入選作が載ったのと同じ月で載っていた作品なのでよく覚えています。当時中学生だった私にとって、打歩詰打開の44龍捨てはびっくり仰天でした。
今の目で見てみると、43桂合いを発生させた上を龍が滑っているのが美しい。無駄な駒のない、さすが上田さんという完成度です。
それと、他の例をもう一作。

岩田智之作(将棋世界2006年2月)

27桂、同飛生、37飛、同飛生、27桂、同飛生、47桂、同飛生、46角、同飛成、36歩、同龍、24馬まで13手詰。

他にも似た作品があるかもしれませんが、私の覚えている限りで一番シンプルな作品を引っ張りだしてきました。上田作から2段下げて、飛車を生で運動させているところが見どころ。この月の優秀作。

この2作品は打歩詰打開を主眼としているため、軽く上手にまとまっています。今回この作品を取り上げたのは、同じ飛車の翻弄でもとんでもないものに化けうるという例をお見せしたかったからです。


中村雅哉作(詰将棋パラダイス高校2007年9月、半期賞受賞作)


たとえば初手66香だと65歩合で上部脱出が防げません(作者本人からご指摘いただきました。ありがとうございます)。

で、作意は77のと金をずらすために初手67飛!65桂の移動中合は同飛、53玉、54銀から攻めていって簡単(下図参照)


同時にこの飛車は77のと金を狙っています。これは玉方の桂が品切れだから成立する技で、たとえば56桂、同飛をはさんでから67飛と打つと、65桂打とされて


以下54馬と迫っても75玉で、77にはひもが付いているので逃れ(上図の65桂打合は限定で、他の合駒では77飛以下詰むようです)。
というわけで、冒頭は67飛、同と。


さらにつぎの56桂も、よく入ったなという手。これを省いて66香だと65桂跳!


これを同香では75から、同馬では53から脱出されます。42馬としたいのですが、飛車が縦に効いているので逃れ。だから56桂をはさむ必要がある、ということです。他にも煩雑な紛れが数え切れないほどありますが、簡単に仕組みだけ紹介させていただきました。
ここを過ぎるとぐっと変化・紛れが少なくなって解きやすくなります(小骨はいくつかありますが、これも省略させていただきます)。

<再掲初形>

67飛、同と、56桂、同飛、66香、同飛、76桂、同飛、75銀、同飛、65歩、同飛、54馬、同銀、74金まで15手詰。

単なる打歩詰打開では、作品の広がりに限りがあります。そこで中村さんは以下の3つを盛り込んでいます。
・63銀を配置し、54馬捨てを収束に加える
・53桂を配置することにより66香捨てが入るようになり、さらに65桂の移動中合を紛れに置くことで56桂捨てが入る
・67飛を逆算

作者本人に聞いたところ、やはり67飛は最後につけ足したものだそう。

中村さんがこの作品を作るとき、頭の中にはきっと冒頭にあげたような過去作(もしかしたらここに書いた2作品以外かもしれませんが)があったはずです。打歩詰を使うと簡単に軽くまとまる素材。しかし打歩詰を捨てることで、こんなに重厚な作品に仕上げるのはとてもまねできません。

看寿賞受賞作の「弄龍」も好きですが、こちらの作品の方が、重量感があって私は好みです。

※作者本人に変化紛れを問い合わせたところ、詳細を後ほど送って下さる、とのことでした。なので、必要に応じて後日、変化紛れの解説を付け加えるかもしれません。

<オマケ・自作紹介>
これに触発されてできたのが以下の自作。

将棋世界2011.12/この詰将棋がすごい!2012年度版

53銀、同飛、54桂、同飛、44香、同飛、34桂、同飛、52角成、同玉、53金まで11手詰

ちょうど上田作、岩田作、中村作とは飛車の動きが逆になっています。詳しい解説は省略しますが、こちらもよく似た作品があることでしょう(本作の価値は、複雑になりがちなものを少ない駒数、簡潔な変化で表現できた点にあると思っていますが)。
これを「この詰将棋がすごい!2012」で中村さんに逆に選んで解説していただけることになるとは、予想外でした。

会合などでいろいろな方と話をするとやはり自分の脳は刺激される(ということで、創棋会から帰ってきてパソコンに向かっている次第なのですが)。このわくわく感はいくら年をとっても忘れたくない。

こんな感じの批評がもっと本誌にも出回るといいのにな…と考えつつ、筆を置きます。
[2013/10/21 00:14] | 詰将棋鑑賞 | トラックバック(0) | コメント(2)
詰将棋解析4:藤沢英紀作(19手)
お久しぶりです。未だにインドネシアでネットが不便な生活を送っています。
日本に帰国した後も、修論が忙しく更新が難しそうです。
のろのろでコンテンツも薄いですが、お許しください。
一番上に出る広告が醜いので、月1回は記事更新できることを願っています。

パラ2006年19手、藤沢英紀作
fujisawa.png

初手23桂では12玉で逃れますので、初手は13香。12に合駒をすると23桂打、同金、同桂生、同飛、33角で詰み。なので13香には同金しかありません。
…と解説を書こうとしましたが、こういうものは解析不要で鑑賞したほうがいい。

作意手順
13香、同金、23桂打、同金、55角、44桂合、23桂生、12玉、11桂成、同玉、44角、12玉、
22金、13玉、25桂、同飛、35角、同飛、23馬まで19手詰
fujisawa2.png

これだけ簡素な形から5手目55角!このタイミングでしか成立しないというのだから驚きです。本誌の解説にも書いてありますが、
55角に33合駒なら23桂生、12玉、11桂成、同玉、33角成で詰む。
しかし、5手目から同桂生、12玉、11桂成、同玉、33角は12玉で逃れ。

収束は既成ですが、仮に最後の3手、5手を抜き出したとしても不要駒がない。
レストランでいえば、フルコースの最初に出てくるような。
小さくてすぐに食べられるけれど、完璧な仕上がりの作品。

このような素敵な小品を作った作者が本当にうらやましいです。

今回は普段解説しているような作品と比べるとだいぶあっさりと終わりました。
解説を書きたい作品はいくつか目星をつけているのですが、どれも重量級。
いつになるかわかりません。

冒頭の通り、1ヶ月以内を目標に頑張りますが、果たして…

[2013/09/25 23:22] | 詰将棋鑑賞 | トラックバック(0) | コメント(1)
詰将棋懐石メモ~h160seの倉庫~


※あまりにも陳腐な名称なので漢字を少しかえてみました。懐石料理のようにじっくりと詰将棋を味わう意味も込めて。

プロフィール

shogisolving160

Author:shogisolving160
詰将棋の自作置き場、及び人の作品の覚書。人に見せるというよりも、自分の頭を整理する意味が強いので、その辺お許しください。あ、リンクフリーです。

※図面を勝手に掲載された!という作者の方へ
勝手に図面を掲載してしまい、不快な思いをされた場合はお詫び申し上げます。連絡いただいた場合は速やかに記事を削除させていただきますので、どうぞご連絡ください。

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